日本歯科大学の八重垣健教授の再生医療研究チームが、ヒトの乳歯や永久歯の歯髄から得た幹細胞を、肝臓の細胞と同じ性質を持つ肝臓様細胞に変化させマウスに移植し、肝臓の再生・肝硬変の治癒に成功した。
「歯髄」とは歯の神経部分のことで、さまざまな種類の細胞に変化できる「幹細胞」が含まれている。歯髄の幹細胞は他の組織から隔離された環境にあるため、遺伝子のダメージが少なく、発がんリスクが小さいというメリットがある。
特に乳歯の歯髄に存在する幹細胞は他の細胞に変化する能力が高く理想的だが、永久歯からでも採取することは可能で、他の部位に比べ幹細胞を採取するのが容易だという。
八重垣教授はヒトの歯髄から得た幹細胞にいくつかのタンパク質を使い、ヒトの肝臓の細胞と同じ性質を持つ「肝臓様細胞」へ変化・培養することに成功。こうしてできた肝臓様細胞を、人為的に急性肝不全や胆汁性肝硬変を起こしたマウスに移植した。
その結果、急性肝不全を起こしたマウス6匹すべての肝臓の再生、肝硬変を起こしたマウス6匹の治癒(血液成分の改善)が確認できた。
今回はマウスを使って有効性・安全性を調べる前臨床実験であり、基礎的な実験データで肝臓の再生・治癒を確認したが、今後、人間と内臓組織が似ているブタでの実験を進め、肝臓疾患の専門医や研究機関の協力を得ながら臨床応用に向けて準備を進めていきたいとしている。