新たな国民負担の議論に
ただ、再生エネルギーや電力業界に詳しい専門家によると、電力会社にも事情はある。「導入率が6割程度に達すると、今の日本の電力会社の系統(電力を供給するための発電・変電・送電・配電を統合したシステム)では間に合わなくなる。そのためには導入量を抑えるか、欧州のように系統を強化する必要がある」という。停電などを起こさずに電力を安定的に供給するには、この統合システムのバランスを崩さない運用が重要で、天候などで発電量が増減する再生エネルギーが増えると、安定が崩れ、第停電などが発生しかねないというのだ。
先頭を走る九電の場合、今のペースだと再生エネルギー比率が6割に達するまで「早ければ1~2年」とみられ、専門家は「今は道路が渋滞していないが、いずれ渋滞するのがわかっているので、今のうちに対策を立てようとしている」と、早めの受け入れ停止の狙いを推測する。
九電など5社の買い取り中断を受け、小渕優子経済産業相(当時)は「様々な影響が出ていることは認識している。電力会社の受入量が本当にその量であるのか、第三者がしっかり検討しないといけない。もっと増やす手立てがないのか、併せて検証していく」と発言。経産省は総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)に「系統ワーキンググループ」を設け、電力会社が再生エネルギーを最大限受け入れることができるよう、接続可能量や系統インフラの整備について検討することになった。
しかし、将来的に再生エネルギーを増やしていくためには、いずれ欧州並みの系統インフラの整備が必要となる。それは電力自由化で発送電が分離されても同じこと。道路に例えるなら、未舗装路を舗装し、さらに2車線に増やすような作業だという。現行制度では、その設備投資は再生エネルギー発電事業者が負担することになっている。政府の検討が進むにつれ、電気料金引き上げという新たな国民負担が議論を呼ぶのは間違いない。