韓国で記録的ヒットの抗日映画、「鳴梁」が年内に中国の3000館以上の映画館で公開されることになったとして韓国メディアの気勢が上がっている。1597年に倭軍(日本軍)330隻に対しわずか12隻の船で勝利を収めた「事実」を映画化したものだそうで、当時、韓国と共に日本と戦った中国だけに共感が大いに得られるだろうし、戦いで活躍した韓国の英雄、李舜臣将軍をもっと知ってもらいたい、というのだ。
一方日本では、この「鳴梁海戦」で朝鮮水軍は日本軍と戦ったものの、圧倒的な軍事力の差で撤退したと伝えられている。そうした認識の違いや、近年の日韓関係のこじれもあり、ネットでは「どうせ日本では公開できないだろ」などといった感想が出ている。
明と朝鮮が合同で日本軍と戦った「露梁海戦」を中国人は知っている
朝鮮日報、中央日報などによれば、「鳴梁」は韓国で2014年7月30日から公開され観客1760万人を動員する大ブームになっている。さらに北米で8月15日に公開されると10月12日までに興行収益が約2億7600万円となり、韓米仏合作映画の「スノーピアサー」を除けば韓国映画として北米市場で最高記録を立てた。また、アジアン・フィルム・マーケットで台湾・インド・オーストラリア・ニュージーランドなど計13カ国・地域に買い付けられた、と報じている。そして「抗日戦争映画の大作」として期待が高まっている中国で、年内に国内の全映画館の3分の2にあたる3000館以上での公開が決まったとも報じている。
10月20付けの中央日報日本語電子版は、中国人は1598年に明と朝鮮が合同で日本軍と戦ったもう一つの海戦「露梁海戦」を知っている、とし、
「韓国の人たちが三国志の劉備、関羽、張飛についてよく知っているように中国の観客も『鳴梁』を通じて世界10大海戦である鳴梁海戦と李舜臣将軍についてさらによく知る契機になればと思う」
という韓国の映画投資・配給会社のコメントを掲載した。
「日本でも公開したいのかもしれないが無理」
「鳴梁」の内容は16世紀末の壬辰倭乱(じんしんわらん)と呼ばれる戦い(日本では文禄・慶長の役)で、攻めてきた日本軍を、朝鮮水軍率いる朝鮮王朝時代の名将、李舜臣(イ・スンシン)将軍が活躍する「史劇」で、わずか12隻の船で330隻の日本軍に勝利するという話をもとにしている。朝鮮の板屋船が上から突き刺すように日本の軍船に体当たりし粉砕するというシーンが見どころだという。朝鮮日報の14年8月10日付けでは、「鳴梁」について、
「『乱中日記』に忠実な映画を作っている。ほかの史劇映画に比べ考証をきっちりやっているようだ」
といった専門家の意見を掲載している。
いわば韓国の「抗日の先駆者」を英雄として描く作品だけに、日本ではこうした記事や「鳴梁」については冷ややかな反応だ。怖いもの見たさもあるのだが、
「日本でも公開したいのかもしれないが、そもそも無理でしょ」
などといった意見が早くもネットに出ている。映画が描く「壬辰倭乱」は、史実とは異なり、そうした日本軍がボロ負けするフィクションを「史劇」として見せられてもしょうがない、という声もある。
「こんなものを観て溜飲を下げているようだから、あの国はいっこうに後進国から脱却できないんじゃないの?」
「何一つ証拠のない韓国の言う『本当の歴史』」
などといった意見も出ている。