福島産野菜のパフォーマンスが物議 英紙が「核スープ」の見出しで報道する

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   福島県産野菜のスープを使ったパフォーマンスがイギリスで開かれた現代アートのイベントで披露され、論議を呼んでいる。海外にまで風評被害を広げるという批判もあるからだ。

   会場のブースでは、思案気な様子でスープを飲んでいるイギリス人らもいる。それもそのはず、壁には、青緑色に着色されたスープの写真が貼られていた...。

来場者の女性「ひと口でリスクあるかも...」

主催者のフェイスブックでも紹介
主催者のフェイスブックでも紹介

   2014年10月17日深夜放送のTBS系「NEWS23」では、こんなシーンをニュースで紹介した。それは、ロンドンで15~18日に開かれた「フリーズ・アートフェア」でのパフォーマンスだった。

   パフォーマンスを行ったのは、福島県いわき市出身で米ニューヨークを中心に活動しているアーティスト荒川医(えい)氏(37)が兄とともに立ち上げた「ユナイテッド・ブラザーズ」だ。

   福島県産の切り干し大根と干しシイタケを使ったスープは、荒川氏の母親が作ったといい、来場者には無料で配られた。スープには、放射線量を測定し、安全が確かめられた野菜だけを使ったそうだ。テレビ映像を見ると、気兼ねなしに食べているイギリス人らの姿もあったが、ある女性は、「飲み切るか分からない。ひと口でリスクあるかも...」と神妙な表情でスープに口をつけていた。

「『このスープは安全かどうか、自分で考えて下さい』という疑問を投げかけるようなアートを作りたかった」

   荒川医氏は、TBSのインタビューに、パフォーマンスの意図についてこう説明した。来場者のイギリス人らから不安の声も漏れたことについては、福島についての固定観念をなぜ持つのか、被害に目を向けて考えるきっかけにしてほしかったと言っていた。

   日本美術サイトのインタビューによると、荒川医氏は、13年ごろにもオランダのイベントで同様なスープを配って、物議を醸していたという。

「英語の発信が少ない中、誤解が定着しやすい」

   荒川医氏らのパフォーマンスは、2014年9月25日ごろから英メディアでも話題になっていた。

   英BBCテレビの取材で注目を集め、英イブニング・スタンダード紙は、荒川氏らが配ったスープについて、「核スープ」との見出しで報じた。英ガーディアン紙は、安全は確認されているとしながらも、「来場者は、飲むべきかというジレンマに直面する」と紹介した。

   また、他国のメディアでも取り上げられ、米CNNテレビは、記者はスープを飲んだとしたうえで、「あなたは敢えて飲みますか?」と問いかけている。

   こうした反応が日本のネット上に伝えられると、荒川医氏らのパフォーマンスに批判も相次いだ。「風評被害を拡散する行為としか思えない。芸術といえば、問題提起といえば、何をやってもいいのか?」「アートとして未熟、単なる個人の売名行為に利用されてる感が拭えない...」といった声だ。

   ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏は、ツイッターで、「福島からも日本政府からも放射能に関する英語の発信が少ない中、誤解が定着しやすい」と懸念を示した。そして、「東北の復興が軌道に乗るかどうかという微妙な時期なだけに、アートとは別のプライオリティーも意識してほしい」と訴えている。

   もっとも、ネット上には、アートとして理解を示す声のほか、「危ないと云えない空気があるからこそ この作品が成り立ってる」といった指摘もあった。

   福島県の農産物流通課では、取材に対し、駐日英国大使館からイベントの話は事前に聞いていたと明かした。そのうえで、「パフォーマンスの内容は詳しく把握していませんので、すぐには答えられません。芸術としてされていることですので、特に申し上げることもないと思います」と答えた。農家などからの苦情も把握していないという。

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