「脂肪燃焼効果がある」「がんのリスクを減らす」など、コーヒーの健康効果が注目されている。そして、新たに美容面でもいい効果を及ぼすことがわかった。コーヒーが顔のシミを予防するというのだ。
コーヒーを飲む量が多い人はシミが少なかった
ポリフェノールという物質は細胞がサビるのを防ぎ、肌の老化などのアンチエイジングに欠かせない。赤ワインに含まれる「アントシアニン」や、緑茶に含まれる「カテキン」などが有名だが、実は、コーヒーにもポリフェノールが豊富に含まれている。コーヒー1杯には、約200~300mgのポリフェノールが含まれるが、これは赤ワインと同程度、緑茶の約2倍にも相当する。
ところで、私たちはポリフェノールをどの食品から摂取することが多いのだろうか? 2014年7月のInternational Journal of Dermatology誌で発表された研究では、「日本人が1日に摂るポリフェノールの約半分は、コーヒーから摂っている」としている。また、コーヒーを飲む量が多い人ほど、1日に摂るポリフェノールの量も増加傾向にある。
さらに、研究は、健康で非喫煙の30~60歳の日本人女性131名を対象に、コーヒーを飲む量と顔のシミの関係について調べている。食事の内容や生活状況を調査するとともに、頬の水分量や、弾力性を測定し、デジタル写真を用いてシミの評価を行なった。その結果、「コーヒーを1日2杯以上飲む人は、紫外線による顔のシミが少なかった」という。
クロロゲン酸がシミをブロック
コーヒーに含まれるポリフェノールの中で代表的なのが、「クロロゲン酸」という成分だ。コーヒー豆中に約5~10%含まれ、コーヒーの褐色や苦味、香りのもとになっている。コーヒー以外にも、ゴボウやキャベツ、りんごなどにも含まれている。
アンチエイジング医師団のメンバーで、紫外線による皮膚の老化(光老化)を研究する神戸大学の市橋正光名誉教授は、「紫外線を浴びると、表皮角化細胞が色素細胞にメラニンを作れと命令を出します。日焼けで黒くなるのはこのためです。日焼けで黒くなっても、健康な皮膚では表皮角化細胞からの命令がなくなり、新陳代謝によって、表皮角化細胞がはがれ落ち、元に戻ります。しかし、紫外線を長年浴びた表皮角化細胞は、細胞の遺伝子に間違いが起き、『メラニンを作れ』と命令し続けるため、一部の皮膚でメラニンが過剰に作られ、シミになります。コーヒーに含まれるクロロゲン酸は、色素細胞に『メラニンを作れ』と命令するルートと、色素細胞から表皮角化細胞にメラニンが受け渡されるルートの2つをブロックすることで、シミを抑えている可能性が高いのです」と説明する。
ポリフェノールの摂取量は、1日約1000mg~1500mgが効果的だ。コーヒーだけで摂ろうとすると、3~5杯に当たる。おいしくてシミ予防にもなるなら、毎日たくさん飲みたくなるが、コーヒーにはカフェインも含まれている。
「胃が荒れたり自律神経が乱れたりする場合もあり、飲み過ぎには注意が必要です。妊婦にはカフェイン抜きのコーヒーがおすすめです」(市橋教授)[アンチエイジング医師団取材TEAM]
参考論文
Skin photoprotection and consumption of coffee and polyphenols in healthy middle-aged Japanese females
DOI:10.1111/ijd.12399
アンチエイジング医師団
「アンチエイジングに関する正確で、最新かつ有効な情報」を紹介・発信するためにアンチエイジング医学/医療の第一線に携わるドクターたちが結成。 放送・出版などの媒体や講演会・イベント等を通じて、世の中に安全で正しいアンチエイジング情報を伝え、真の健康長寿に向き合っていく。HPはhttp://www.doctors-anti-ageing.com