「常勝軍団を作りたい」――。大久保博元・楽天イーグルス新監督は2014年10月14日の就任会見で力強く宣言した。
ただ、発表直前にはインターネット上で「一軍監督就任反対」の署名運動が起きるなど異を唱えるファンもいる。大久保氏の起用を決断した球団の考えは何だったのか。
チーム内での経験、実績を評価
大久保氏は本拠地・楽天Koboスタジアム(仙台市)で行われた就任会見に立花陽三球団社長とともに出席した。2軍の練習、試合が行われている宮崎で、この日朝になって初めて正式に就任の打診があったと明かした。「俺、本当にやんのかなぁ」と考えながら移動したと振り返り、突然の監督就任だったと認める。
抱負を聞かれ、「星野(仙一)さんの後だからプレッシャーはある。そのために命と体をかけて常勝軍団を作りたい」と宣言した。報道陣からファンへのメッセージを求められると、表情は固くなり、「厳しい見方はある」と認め、「不安だったり、色んな思いがあったりすると思う。チャンスをもらったファンのみなさまに恩返しをするには優勝するしかない。最後に笑っていただきたい」と話した。
大久保氏が退場し、球団の編成や人事に携わる安部井寛チーム統括本部長が記者の質問に答えた。大久保氏以外にも後任候補は複数人いたと明かし、「外部からではチームを知ってもらうのに半年程度の時間がかかる。打撃コーチ、2軍監督の経験がある大久保氏の内部昇格が妥当だと判断しました。1年目から結果を出していただきたい」と説明した。星野監督の退任発表直後から「本命」報道がありながら、正式発表が遅れたことについては「球団内の色んな議論に時間がかかった」と釈明した。
会見後、安部井部長はJ-CASTニュースの単独取材に応じ、監督就任への反対署名については、「球団としても知っていました」と明かす。大久保氏自身も反対署名についてはネットニュースで知っていたという。
一部ファンから反発があることを認めながら、なぜ球団は同氏の抜擢に踏み切ったのか。
「勝敗の要因を分析、議論できる数少ない人材」
安部井部長は「大久保氏は試合をプラン立てて考えることができます。勝敗の要因についてしっかり分析でき、監督の立場でそれをコーチ、選手たちにぶつけて議論することができます。野球界では数少ない人材です」と評価ポイントを挙げる。
今シーズン、星野監督が病気のため戦列を離れていた時期の監督代行としての仕事ぶりも評価する。首脳陣と選手の責任を明確にするなど、選手がプレーしやすい環境を作っていたという。
厳しい視線を送るファンが少なくないことは承知している。
「しかし、本人も監督としての責任を自覚しています。ファンが球場に足を運んでくれるのかどうか、信頼を回復するには言葉で説明するだけでなく、チームをどんな方向に導いていくのか、彼のチームマネジメント次第です」と語る。そして何よりも「大久保氏の手腕、実績を買っての起用」と強調した。
「大久保監督は、何事にもまずはトライしてみようという、柔軟な野球観を持っています。他球団からも評価が高い楽天2軍チームでの徹底した指導実績に加え、スポーツ医学にも精通していて多彩な指導法を持ち合わせており、計画的な選手育成も上手です」
前任の星野監督と同じく、グラウンドに立つとコーチ・選手・スタッフに張り詰めた空気を作れる存在感がありながら、一生懸命やっている選手にはグランド外でもケアしようとする姿勢も評価のポイントだという。
「ベテラン・若手の区別なく、選手とは積極的にコミュニケーションをとっています。ベテラン選手には敬意を払い自主性を重んじ、外国人選手には通訳を介さず話しかける優れた社交性をお持ちです」
今シーズンはリーグ最下位に低迷した。それだけに新監督の手腕への期待は大きい。
「これからは新監督も球団も真の力が試されます。東北のファンのために日本一を取り戻さないといけない。ファンの方々に見直してもらえるよう、フロントも選手獲得など、全力を挙げてサポートしていきたい」