「中国籍だと、外国へ出るのが面倒だから」英国籍を選ぶ
やり取りを聞いていた東洋学園大学教授の朱建栄さんが
「アグネス・チャンさんは何の国籍ですか?」
と質問し、アグネスさんが
「私は、香港のイギリス国籍です」
と答えたところで、番組は次のコーナーに移った。このやり取りを見ていた視聴者の中には、アグネスさんが中国寄りの発言をしているにもかかわらず英国籍だという点に、疑問を持った人も多かったようだ。
ただ、アグネスさんは返還よりも前の段階で、自らが英国籍だということを明らかにしている。アグネスさんは、返還を1か月前に控えた1997年5月31日の毎日新聞夕刊に掲載された特集記事にも登場。記事の中では、
「17歳の時、生活の拠点を日本に移して以来25年。日本人と結婚し3人の男の子をもうけたが、今も英国籍のままだ」
と紹介されている。この記事によると、「中国籍だと、外国へ出るのが面倒だから」という理由で、英国籍(英国植民地籍)を選択したという。
記事の「英国籍(英国植民地籍)」は、英国海外市民(British National Overseas、BNO)のことを指すとみられる。返還までは、希望する香港人は申請して登録すればBNOに登録できた。BNOは英国本土に永住できないなど多少の制約はあるが、ビザなしで行ける国の数が英国本土のパスポート並みに多いといった特徴がある。
返還後の香港には中国の国籍法が適用され、香港在住の「民族的に」中国人である香港人は、中国国籍を持つとみなされている。ただし、返還前に登録していた人はBNOを維持することもできる。
BNOを持たない香港住民には、香港特別行政区(SAR)パスポートと呼ばれる、中国本土のパスポートとは別の種類のパスポートが発行される。日本はBNOパスポートとSARパスポートの両方の利用者に90日間のビザなし滞在を認めており、BNOの優位性は薄れつつある。