「低級な扇情記事」とは違うと主張する朝鮮日報記者
産経批判の急先鋒に立つ朝鮮日報だが、そもそも波紋を呼んだ産経の記事の「元ネタ」は、朝鮮日報に掲載されたコラムだった。見出しは「大統領をめぐるうわさ」。旅客船「セウォル号」沈没事故が発生した日、朴槿恵大統領に「空白の7時間」が見つかり、そこで、「大統領が誰かと密会していた」という世間のうわさが流れたとする。品のない雑談レベルだったはずが、韓国国会でのやり取りをきっかけにメディアでも取り上げられるようになったと説明。続けて、うわさ話に登場する男性の実名を出して「離婚していた」「大統領が議員時代に秘書室長を7年間務めた」と詳細を伝えている。
大統領とこの男性を明確に結びつけてはおらず、「口にすること自体、自らの地位を下げるもの」と考えるようなうわさとしか書かれていない。一方の産経記事は朝鮮日報に記事を引用しつつ、さらにうわさの「正体」についてズバリ「証券街の関係筋によれば、それは朴大統領と男性の関係に関するもの」と踏み込んだ。産経記事の中では、「緊密な関係」をにおわせる話も登場して、確かに生々しい。
とは言え朝鮮日報では、うわさ話について「世間の人々は真実かどうかを抜きにして、このような状況を大統領と関連付けて考えた」と書いている。ぼかした表現で、「世間の人々」が言ったことにして逃げ道を作っているが、大統領のスキャンダルが想像できそうな言い回しともとれる。
だが2紙の明暗は大きく分かれた。朝鮮日報は大統領府から口頭注意があったようだが、ほぼ「おとがめなし」で済んでいる。もちろん検察が起訴するという話は一切聞こえてこない。さらに、産経の元ソウル支局長が朝鮮日報のコラムを参考にした点についてはこれまで社説などで触れることはなく、「だんまり」を決め込んでいる。コラムを執筆した崔普植記者は韓国記者団に対し、自身が書いた内容はあくまで大統領の政権運営の批判であり男女関係という言葉は使っておらず、「低級な扇情記事」とは違うと主張し、産経側を強く批判したという。