アマゾンやアップルの過度な節税に「待った」 EUやOECDが多国籍企業包囲網 

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   多国籍企業による過度の節税に対する包囲網が狭まってきた。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は2014年9月30日、加盟国のアイルランドが米アップルに適用してきた法人税の優遇措置が、「公正な競争条件を整えるEUの規定違反」とする見解を公式に示した。

   欧州委はアマゾン・ドット・コムの節税に関してルクセンブルクについても正式に調査に入った。これより先、経済協力開発機構(OECD)も「過度な節税」への対策として、世界での納税状況をまとめて報告することを企業に義務づけるなどの方針を打ち出した。2013年の主要国首脳会議(G8サミット)で「宿題」になっていたもので、ようやく回答が出てきたことになる。ただ、これを実行するには具体的に各国の法改正などが必要で、対策に実効性を持たせるにはなお時間が必要だ。

アイルランドとアップルの合意を「国の補助にあたる」

EU、OECDがじわじわ包囲網狭める(画像はイメージ)
EU、OECDがじわじわ包囲網狭める(画像はイメージ)

   アップルについて欧州委は、1991年と2007年にアイルランド政府とアップルが税負担を軽くするために合意した取り決めを「(EU規定が認めない)『国の補助』にあたる」と判断した。アイルランドの法人税率は12.5%だが、欧州委によると、アップルは子会社を経由した取引や優遇策を使うことにより実質的に税負担は2%だったという。アップルはアイルランドの子会社が製造業者から製品を仕入れて欧州やアジアなどの拠点に売った形を取り、米国以外の利益を税率の低いアイルランドに集中させてきた。欧州委はこうした手法が税負担の過剰な軽減を招いたと問題視している。

   アイルランド財務省は29日、「EUの規則に違反していないと確信している」として反論書を提出。アップルも「特別な待遇は受けていない」と反論。欧州委の最終判断はまだ先だが、正式に違反と判定すればアップルに対し追加の税金を課す可能性がある。

   アマゾンについても同様で、欧州委は、ウェブサイトの使用料などをめぐるルクセンブルクに拠点を置く同社の欧州販売子会社の節税をやり玉に挙げている。

   アイルランドやルクセンブルク、さらに、やはり法人税率を低くしているオランダを含む各国にはグーグル、マイクロソフト、オラクルなど米大手IT企業が進出しており、節税のための拠点ではないかという厳しい視線が注がれている。

法人税率の低い国に設立した子会社にも対策

   一方、OECDの対策(9月16日発表)は、法人税率の低い国に設立した子会社に親会社の持つ特許や商標権といった知的財産を譲渡し、子会社に特許使用料などを集めて課税を逃れるといった節税を防ぐことが眼目だ。具体的には、各国での事業や納税額、グループ内取引の内訳など(OECD非加盟の国・地域にあるグループ会社の関係分を含む)を、関係する国の税務当局に報告するよう義務づけるというもの。利益をどのように移し、どう節税しているかをチェックし、グループ内で支払われる使用料などが適正な水準かどうか、税務当局が判断する材料とできるわけだ。

   OECDは2015年中にもデータ共有の方法などをガイドラインにまとめ、各国に法改正を求めるが、詳細を詰める上での最大の関心事は義務化の対象企業の範囲だ。中小企業を除く大規模な多国籍企業に限られる見通しだが、企業の事務負担増への反発は強い。報告の提出先をどうするかも大きな問題で、親会社が置かれた国に限るか、子会社のある国でも提出させるかが焦点。この報告範囲によっては、グループ内の知的財産や税額、金融取引など企業の機密情報が各国の子会社や税務当局を通じて漏れることを懸念する声もある。

   こうした対策が実際に効果を上げるかについても、疑問は残る。OECDに加盟していない租税回避地(タックスヘイブン)の国が協力する保証はなく、「きちんと報告した企業が損をするような『正直者がばかをみる』ことがない仕組みづくりが欠かせない」(経済官庁関係者)。

   そもそも、世界ではOECD加盟国も含め、企業誘致のために法人税率の引き下げ競争をしてきており、これが多国籍企業の節税を助長した面がある。日本も、2015年から法人税率を引き下げると決めたばかりだ。OECDのルールが正式に決まっても、それを実行するためには各国で法律の改正が必要になり、節税防止策を徹底させるのは容易でない。

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