法人税率の低い国に設立した子会社にも対策
一方、OECDの対策(9月16日発表)は、法人税率の低い国に設立した子会社に親会社の持つ特許や商標権といった知的財産を譲渡し、子会社に特許使用料などを集めて課税を逃れるといった節税を防ぐことが眼目だ。具体的には、各国での事業や納税額、グループ内取引の内訳など(OECD非加盟の国・地域にあるグループ会社の関係分を含む)を、関係する国の税務当局に報告するよう義務づけるというもの。利益をどのように移し、どう節税しているかをチェックし、グループ内で支払われる使用料などが適正な水準かどうか、税務当局が判断する材料とできるわけだ。
OECDは2015年中にもデータ共有の方法などをガイドラインにまとめ、各国に法改正を求めるが、詳細を詰める上での最大の関心事は義務化の対象企業の範囲だ。中小企業を除く大規模な多国籍企業に限られる見通しだが、企業の事務負担増への反発は強い。報告の提出先をどうするかも大きな問題で、親会社が置かれた国に限るか、子会社のある国でも提出させるかが焦点。この報告範囲によっては、グループ内の知的財産や税額、金融取引など企業の機密情報が各国の子会社や税務当局を通じて漏れることを懸念する声もある。
こうした対策が実際に効果を上げるかについても、疑問は残る。OECDに加盟していない租税回避地(タックスヘイブン)の国が協力する保証はなく、「きちんと報告した企業が損をするような『正直者がばかをみる』ことがない仕組みづくりが欠かせない」(経済官庁関係者)。
そもそも、世界ではOECD加盟国も含め、企業誘致のために法人税率の引き下げ競争をしてきており、これが多国籍企業の節税を助長した面がある。日本も、2015年から法人税率を引き下げると決めたばかりだ。OECDのルールが正式に決まっても、それを実行するためには各国で法律の改正が必要になり、節税防止策を徹底させるのは容易でない。