日本学術会議が自戒込め異例の提案 震災対策やエネルギー政策で政府に再考求める

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   日本を代表する大学教授ら有識者で組織する日本学術会議が2014年9月末、震災対策やエネルギー政策をめぐり、自ら反省を込めながら、政府に積極的な政策提言を行った。

   マスコミは大きく報道していないが、大地震発生時の津波対策や、原発の使用済み核燃料の再処理などについて政府に再考を求めている。

海底地震津波観測網の整備求める

異例の提言(右手の白い建物が日本学術会議)
異例の提言(右手の白い建物が日本学術会議)

   提言は、「これからの地球惑星科学と社会の関わり方について――東北地方太平洋沖地震・津波・放射性物質拡散問題からの教訓」と題し、前述の反省の上に、まず「日本周辺の海底地震津波観測網を整備し、地震時における津波警報発令までの時間を少しでも短縮することが重要。観測網の整備と更新は国が責任をもって行うべきだ」と指摘している。

   日本学術会議によると、東日本大震災後、関東から北海道にかけての日本海溝や東南海地域には海底地震津波観測網が整備されたが、「日本全体を見るなら、海底地震津波観測網は極めて不十分。日本海など観測網の空白地域をなくすことが人的被害の軽減につながる」という。津波警報は早期に発することが人命救出に直結するため、「現在観測網の設置されていないすべての海域に設置することがなにより重要」と訴えている。

   一方、エネルギー政策についても踏み込み、特に、原発の使用済み核燃料を再処理して出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)をめぐって、改めて問題提起したのが目を引く。

   核のゴミ問題の議論は、目下、膠着している。現行制度では、再処理後の高レベル放射性廃棄物をガラスで固め、金属容器に入れて地下300メートル以上の深い地層に埋める「地層処分」を行うことになっている。処分地選定については、経済産業省が所管する原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年以降、自治体に受け入れを公募しているが、難航しており、見通しは全く立っていない。

   これについて、日本学術会議はすでに2年前の2012年9月、「高レベル放射性廃棄物は世界的に対処が困難な問題になっている」として「科学の限界の自覚」を訴え、抜本的見直しを迫った。この中で、具体的な打開策として、高レベル放射性廃棄物と使用済み核燃料を数十年から数百年にわたり、地上か地下周辺に保管する「暫定保管」と「総量規制」を行うべきだという考えを打ち出した。

   提言を受けた内閣府の原子力委員会は「傾聴すべきだ」との見解を再三表明しただけで、具体的なアクションは今もって起こしていない。このため、日本学術会議は「(原子力委は)全体として受容する態度を示しておらず、正面から反論しているわけでもない」と批判していた。

「暫定保管」は30年を一区切りに

   この「暫定保管」とは、現在の科学では高レベル放射性廃棄物を地層深くに数万年以上にわたって安定的に処分するのは、「地殻変動や火山活動等が地下水移動に及ぼす影響の不確実性」などから、困難という議論だ。そこで、高レベル放射性廃棄物を地下深層に埋設せず、当面は陸上付近に安全に保管することで、後世の科学が進歩し、核廃棄物や地層処分をめぐる様々な問題の解決策が見つかるのを待とうという「モラトリアム」の考え方だ。

   この提言は政府を巻き込み、核燃料サイクルの見直しが「暫定保管」を軸に進むかと期待されたが、政権交代後の安倍晋三政権では大きな議論は起きず、政府は高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設を目指す姿勢を変えていない。

   そこで今回、日本学術会議は暫定保管について、「人間の一世代に相当する30年を一区切りとして考えるべきだろう」と、改めて提言した。

   日本学術会議は併せて、政府が目指す原発の再稼動について、「使用済み核燃料をどこの暫定保管施設で保管するか事業者(電力会社)が確保することを原発操業の前提条件とすべきだ」とも指摘。「(暫定保管の)条件を明確化しないままの原発再稼動や原発建設・増設は無責任で、世代間公平の原則を満たさず、容認できない」と踏み込んでいる。

   提言は「地震学を中心として、東北沖の大地震の発生を予測することはできなかった。専門家が発した『想定外』の言葉は科学に対する不信を引き起こした」との反省に基づいたものだが、果たして、政府や世論に影響を与えるか、注目される。

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