日本が世界の足を引っ張る形になりかねない
他の諸外国を見ると、欧州連合(EU)が「2030年に温室効果ガス排出を1990年比40%削減」との目標を表明済みのほか、フランスや韓国などが途上国に提供する「緑の気候基金(GCF)」への拠出を表明、デンマークは2050年までに再生可能エネルギーの利用で化石燃料ゼロを目指すと宣言するなど、積極的だ。
交渉期限まで1年という時期になって、今回のサミットは新枠組みに盛り込む削減目標案の提出時期について、各国がどこまで踏み込むかも焦点だった。提出時期が早いほど、各国の目標案の中身を相互にじっくり点検できる。各国は昨年11月、「準備できる国は2015年3月までに示す」と合意済みで、米中、EUなどはサミットでこの期限順守を改めて表明した。
こんな中で、9月23日のサミットで演説した安倍晋三首相は、発展途上国の人材育成支援(3年で1万4000人)を表明したものの、数値目標は「できるだけ早期の提出を目指す」と述べるにとどまり、インドなどと共に提出時期を示さなかった。
首相は第1次内閣の2007年、世界の温室効果ガス排出量について「2050年までに半減」との目標を打ち出し、「日本は国際社会をリードする」と表明していた。だが、原発再稼働の見通しが立たない今、「とても削減目標を云々できる段階ではない」(政府関係者)。菅義偉官房長官はサミット直後、削減目標策定に向け10月に審議会を設置する方針を示したが、目標の中身は原発への依存比率がポイントになるだけに、全国の原発立地自治体への影響を考えると、来年4月の統一地方選前には結論を出せないとの見方が強い。来年3月には主要国の削減目標案が出そろう中、「周回遅れ」の日本が世界の足を引っ張る形になりかねない。