不況なのに物価が上がる!
2014年10月、乳製品やコーヒー、一部の外食チェーン店や自動車保険料、社会保険料率(厚生年金)も引き上げられるなど、秋の値上げラッシュが相次いでいる。さらには、カップ麺などが15年1月の値上げを発表した。物価の上昇はしばらく続きそうだ。
その一方で、家計の収入は上がらない。8月の毎月勤労統計調査(速報)によると、現金給与総額に物価上昇分を加味した「実質賃金指数」は前年同月に比べて2.6%減で、下げ幅は前月(1.7%減)より0.9ポイント拡大した。これで14か月連続の減少だ。
賃金アップが物価上昇に追いついていないため、「生活は一向に楽にならない」。そう感じている人は多いはずだ。
第一生命経済研究所の主席エコノミスト、永濱利廣氏は「スダグフレーションの可能性」と題したレポートで、「原油価格の上昇により、物価の持続的な上昇と経済活動の停滞が共存すれば、スダグフレーションに陥ることになる」と指摘している。
さらに、東京商工リサーチが10月8日に発表した9月の企業倒産状況によると、円安を原因とした倒産は28件発生し、前年同月の約3倍に膨らんだ。8~10月の急激な円安が追い討ちをかけ、4~9月期の円安倒産は前年同期より2倍超増え、150件に達している。
円安に伴う燃料費の高騰が直撃した運輸業は57件(4~9月期)で最多。次いで卸売業の30件や製造業の27件などが続く。
日本総合研究所調査部・チーフエコノミストの山田久氏は「円安進行の景気への影響をどうみるか」のレポートで、「かつてのような円安=景気にプラスとは言えなくなっている」としている。
すでに日本企業が海外に生産をシフトしていること、日本製品の競争力が低下していること、また原発稼働停止に伴う化石燃料の輸入増加などで輸入量が輸出量を上回っていることが、その要因。しかも、状況は部門ごとに異なっており、大企業製造業を中心とした輸出部門では円安は収益にプラスに働くが、一方で非製造業や中小企業に多い輸入部門とっては「輸入コストの増加を通じてマイナスに作用する」という。
円安の恩恵を受けていない中小企業が儲からなければ、多くの人の賃金が上がらない。不況なのに物価が上がる「スダグフレーション」が現実味を帯びてきたのかもしれない。