産経新聞のウェブサイトに掲載された記事が韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとして、ソウル中央地検が捜査を進めている問題で、同地検は2014年10月8日、筆者の加藤達也前ソウル支局長(48)を「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律」(情報通信法)における名誉棄損罪で在宅起訴した。同法に基づく名誉毀損罪は最高刑が懲役7年だ。
外国の報道関係者に同法が適用されるのはきわめて異例だ。検察側は有罪に向けた立証に意欲を見せているが、韓国メディアの中ですら起訴を支持する声は皆無に近く、有罪の立証は難しいとの見方も出ている。起訴の「無理筋」ぶりが際立つ形になっている。
菅官房長官「国際社会の常識とは、大きくかけ離れている」
今回の起訴をめぐっては、日米がほぼ足並みをそろえた。菅義偉官房長官は10月9日朝の会見で、
「そうした(捜査に懸念を表明する国内外の)声明、動きをいわば無視する形で韓国において産経新聞の前ソウル支局長が起訴されたことは報道の自由、および日韓関係の観点から、きわめて遺憾」
「特に民主国家においては最大限尊重されるべき報道の自由との関係では、法執行は抑制的でなければならないと考える。そのことは国際社会の常識であり、そうした国際社会の常識とは、大きくかけ離れており、本日中に政府としては、韓国に事実関係の詳しい確認と懸念をしっかりと伝達をしたい」
と異例の強い表現で韓国側を非難した。米国務省のサキ報道官も10月8日の定例会見で、
「我々は言論と表現の自由を強く支持する」
と韓国側の対応を暗に批判。韓国が国家保安法などの解釈で表現の自由を制限していることについても、
「最近発行された国務省の年次報告書などを含めて、これまでも懸念を表明しているところ」
と述べた。