このスネアドラム。
一見普通の楽器店でみる新品のスネアに見えます。
しかし実は、東日本大震災で発生した宮城県東松島市や石巻雄勝地区の瓦礫からできているのです。
瓦礫を楽器として再生し、演奏者から震災を忘れない事を伝えてもらう事業があります。
それが、「ZERO ONE 瓦礫再生プロジェクト」です。
提唱者の流行天国工房代表、千葉 秀さんにお話を伺いました。
千葉さんは普段音楽プロデューサーとして活躍する一方、震災後は「青い鯉のぼりプロジェクト」(詳しくはこちら)など震災復興に関わる事業を立ち上げました。
瓦礫再生プロジェクトもその一つで、東松島市に足を運んでいる時にこう思ったそうです。
「瓦礫と呼ばれる前、震災が起こる前は家族との思い出が詰まった大切な家だった。それをただ瓦礫と呼ぶのは耐えられない。ゴミにするのではなく楽器として再生させたい。人間の再生する力はもっと凄いんだ。気持ちの上で震災に負けてないという証にしたい。」
それがきっかけとなり、瓦礫再生プロジェクトが発足します。
行政の許可や瓦礫集積場の理解も必要でしたが、「青い鯉のぼりプロジェクト」の実績があった為に許可がおりたそうです。
すべての木が使える訳ではないので、楽器に再生できそうなものを選定。 足場が悪く危険を伴う作業でした。
最初に製作したのは和楽器の大太鼓。手がけたのは老舗の和太鼓制作会社「宮本卯之助商店」。
家の柱や梁だった部分を回収し、約半年間の乾燥期間を経て製作されました。
津波のために塩分を含んでおり、のこぎりの刃が錆付いてしまったり、柱の中に釘が埋まっていたりと製作は困難を極めました。
普通の工程で製作される楽器よりも、時間、手間、コストがかかります。
大太鼓一つ作るのに必要な経費は150万円。
製作資金の援助は制作元である「宮本卯之助商店」や、宮城県出身の歌手、稲垣潤一さんが手を上げてくれました。
2012年3月、第一号の大太鼓は「宮本卯之助商店」より石巻市雄勝町立雄勝中学校に寄贈。
第二号は「稲垣潤一東北サポート基金」より同じく石巻市雄勝町立雄勝中学校に寄贈。
この二台は雄勝町内の創作和太鼓団体や、学校で使用する為に送られました。
その後、楽器の種類は増え、三味線、カホン、ウクレレ、ギター、ベース、スネアドラム、などが製作されました。
このスネアドラムは、ZERO-ONE瓦礫再生プロジェクトから感謝の気持ちとして稲垣潤一さんに寄贈されたもの。
稲垣さんは、「稲垣潤一東北サポート基金」により瓦礫再生プロジェクトを通し被災地に多くの楽器を寄贈しています。
福島県の立ち入り禁止区域以外の震災瓦礫はもうなくなり、瓦礫再生プロジェクトはこのスネアドラムを最後に製作を終了。
千葉さんは、
「俺たちがいなくなっても楽器は何年も残っている。この太鼓は地震があった時の瓦礫でできているんだと、100年先の子供達にメッセージを伝えられる。時空を超えたキャッチボールができる。。東日本大震災があったことを風化させない。そして、震災前よりも良いふるさとにしないといけないと思う。それが今を生きている人のできることだ。」
と言う。
寄贈された大太鼓の中には「この太鼓は平成23年3月11日に発生した東日本大震災の瓦礫から製作したものである」というメッセージが刻まれている。
瓦礫再生プロジェクトで製作された楽器を、演奏者たちが演奏を通し震災のことを伝える。 将来その楽器を継承した者達が、さらに伝承者として未来の子供たちにメッセージを伝えてくれることでしょう。
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仙台発ネットテレビ局アリティーヴィー
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