済州島でいわゆる従軍慰安婦が強制連行されたとする虚偽の証言「吉田証言」を朝日新聞が報じた問題が、単なる誤報にとどまらず、学問や報道の自由の問題に波及してきた。
慰安婦報道にかかわったとされる複数の元朝日記者の再就職先の大学に、大学を辞めさせなければ「釘を混ぜたガスボンベを爆発させる」といった内容の脅迫文が届いたからだ。
「釘を入れたガス爆弾を爆発させる」
攻撃の対象になっているのは、当初は吉田証言を最初に報じたとされていた清田治史氏(67)と、慰安婦のインタビュー記事を報じた植村隆氏(56)。清田氏は、14年8月5日の慰安婦問題の検証記事では吉田証言の初報を執筆したとされていたが、9月29日には「元記者(編注:清田氏)は当該記事の執筆者ではないことが分かりました」という訂正記事が掲載された。
清田氏は帝塚山学院大学(大阪府大阪狭山市)で教授を、植村氏は北星学園大学(札幌市厚別区)で非常勤講師を務めていたが、結果として脅迫を受けた両校の対応は分かれた。
帝塚山学院大は9月13日に、
「清田治史氏に対して多数のご意見、お問い合わせを頂戴しておりますが、同氏は9月13日を以て、本人の申し出により退職しましたことをお知らせいたします」
という内容の文書をウェブサイトに掲載。この日に同大宛てに釘入りの脅迫文が届いていたことが後に明らかになるが、大学側は脅迫文と退職の因果関係を否定している。
10月2日に津田謹輔学長名で発表された文書には、
「現在、報道にもありますように管轄の警察署に随時報告するとともに、学内の警備強化を進めております。学生の安全確保を最優先と考え、今後とも最善の態勢整備に努めてまいります」
とあり、「釘を入れたガス爆弾を爆発させる」などと脅迫文の内容を報じた報道を大筋で認めている。