FMいわきは、同じいわき市内でも山間地では聴取が難しい。そう思っていたから、夏井川渓谷にある隠居(無量庵)では、AM放送かCDをかけるだけだった。カーラジオも同じで、市街地を離れて渓谷に入るとCDに切り替えた。
そんなわけで、溪谷でFMいわきを聞くことができる――と気づいたのは、つい最近。カーラジオをかけ続けていると、途中から雑音が入ったり、沈黙したりした。が、そのままかけていたら、溪谷の江田地区に入って音が鮮明になった。
隠居に着くとすぐラジカセ(=写真)をかけ、AMをFMに切り替えて76.2メガヘルツに合わせた。ちゃんと聞こえる。3・11後、FMいわきの聴取エリアが拡大したと、新聞かなにかで読んだ記憶がある。これだったか。
ネットで拾ったFMいわきの広報文(2013年5月15日付)によると、災害時の市民への情報提供を目的に、難聴取地域の解消を図るため、いわき市内山間部を中心に13中継局を設置した。総務省の補助事業(「ICT(情報通信技術)地域のきずな再生・強化事業」)を活用したようだ。もう1年以上前から、溪谷でも聴こうと思えば聴けたのだ。
夏井川渓谷に最も近い中継局は上流の川前、次いで山ひとつ越えたところにある戸渡。川前局は川前小中学校に、戸渡局は旧戸渡分校に設けられたという。主として川前から電波が届くようになったのだろう。
で、このごろはカーラジオをFMいわきに合わせている。月曜日(9月22日)に双葉郡富岡町経由で阿武隈高地の南半分を一周した。FMいわきをかけっぱなしにして、どこまで聞こえるかチェックした。
ざっとこんな感じだった。国道6号は「道の駅ならは」(現在は双葉警察署の臨時庁舎)あたりで急に聞こえなくなったあと、開けたところに出ると雑音になる。阿武隈の山里では川内村に入って、雑音交じりの放送が聞こえ、田村市では国道288号から磐越東線沿いの県道(滝根町)に入って、雑音交じりの放送が復活した。小白井局(小白井小中学校)からの電波だろうか。
夏井川渓谷では震災1カ月前にケータイ(ドコモ)がかかるようになった。それまでは、隠居は連絡の取れない「隠れ家」同然だった。そして今度、FMいわきが聞こえるようになった。光ファイバー網ができた結果だろう。地元のFMは歓迎だが、ケータイがつながるのはあまり好ましくない。といっても、そのつながりの深化が人の集まりをより可能にした。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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