日本一奪還を目指す巨人が大きな不安材料を抱えている。エース菅野智之が使えなくなる可能性があるからだ。
ペナントレース同様に原辰徳監督の苦労は続く。
総合力と「原さい配」で勝ち抜いた
「今シーズンはよく勝てたと思う。それこそチーム一丸、全員で勝ち取った優勝だったということで印象に残る」
リーグ3連覇を決めた2014年9月26日、原監督はそう総括した。確かに、今年の巨人は戦力をやりくりし、総合力で勝ち抜いた。監督のさい配で勝った、といえるかもしれない。
とりわけ打線は心もとなかった。その象徴だったのが4番打者。「日替わり4番」と揶揄されるほどだった。
それを支え、阪神と広島の追撃を振り払ったのが投手陣の頑張りだった。なかでも菅野は首位死守の原動力といえた。2年目の今季、開幕投手を務め勝利。序盤のダッシュをもたらした。
その菅野がシーズンのメーンイベントを前に右腕の異常を訴えた。10月2日のヤクルト戦に先発し、2イニングを投げたたけで降板。このときは「腰の異常」だったが、検査をした結果、事態は軽いものではなかった。
「右ヒジ靱帯の部分損傷」
腰もヒジも痛んでいたことが分かった。クライマックスシリーズの登板を目指し、調整登板だったのだが、故障が発覚するという皮肉な投球となった。
勝てる投手で勝たないとシリーズ制覇難しい
菅野は今や、セ・リーグ有数の投手と高い評価を受けている。安定感ではチーム一。杉内、内海といった実績のある投手に衰えが見えるだけに、チームがもっとも信頼しているのが菅野なのだ。
原監督が菅野を軸に、クライマックスシリーズ、日本シリーズを見据えていた。その柱が投げられないとなると、戦い方ががらりと変わる。
現在の巨人投手陣で計算ができるのは菅野だけといっていい。杉内、内海は後半になるとつかまることが多い。復活した沢村は調子の波が激しい。今季売り出した小山、セドンは経験不足で投げさせて見なければ分からない。
短期決戦は相手に通用する投手を絞って戦う。ローテーション通り投げさせ、敗戦も計算しながら試合を行うのとは全く異なる。勝てる投手で勝たないとシリーズを制覇することは難しい。
「(治る)可能性を信じて、早く治して戻ってきたい」
菅野はまさに一縷の望みにかけている。それは原監督も同じだろうが、ボールを握らずに治療するという事態を考えると、ますます苦しい。
ただクライマックスシリーズはベンチに入らず、日本シリーズに進出したときに投げる、という可能性はあるかもしれない。ご存じの通り原監督にとって菅野は甥にあたる。シーズン中に父・貢氏を亡くしたばかり。原ファミリーが最後までクローズアップされる今季の巨人である。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)