動画投稿サイト「FC2」が、警察の家宅捜索を受けた。会員の男が性行為を生中継して逮捕された事件で、これを知りながら放送を黙認した「公然わいせつほう助」の疑いで調べを受けた模様だ。
FC2にはほかにも、著作権を無視した形でのテレビ番組の録画動画が数多く投稿されている点が問題視されている。配信業者としての責任が問われるが、ではこうした違法動画を視聴する側はおとがめなしなのか。
動画投稿サイトの閲覧「違法ではなく、刑罰の対象とはなりません」
2014年10月5日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、FC2のわいせつ行為ライブ中継の話題が取り上げられた。出演者のダウンタウン・松本人志さんはFC2を知っているかと聞かれて、「『ローカル路線バスの旅』を見損ねたから、FC2で見たわ」とこたえた。お笑い芸人の東野幸治さんも、NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」を見たと明かした。
2人はいずれも、放送終了後のテレビ番組を無料で視聴したとみられるが、FC2は有料版の動画も提供している。わいせつ行為を生中継していた男も視聴者に課金していた。集まった金額の7割は動画投稿者に支払われ、残りの3割がFC2に渡る仕組みだという。ITジャーナリストの三上洋氏は「ワイドナショー」の中で、こうした有料システムを悪用して、テレビ番組を録画して無断でFC2にアップロードする人が増える懸念があると指摘した。当然、著作権法違反の疑いが出てくる。
違法な動画を用いて視聴料を「巻き上げる」のは、もちろん許されない。だが無料提供でも、そもそも動画投稿自体に著作権侵害の恐れがあるだろう。また、こうした動画を視聴した側も法に触れないのかという疑問が生じる。
2012年10月施行の改正著作権法で、いわゆる「違法ダウンロード」による行為が刑事罰の対象となった。文化庁が、どのような場合に罪に問われるか「Q&A」をまとめている。「違法に配信されている音楽や映像を視聴しただけで、違法となるのでしょうか」という問いには、「見たり聞いたりするだけでは、録音又は録画が伴いませんので、違法ではなく、刑罰の対象にはなりません」との回答だ。ただし、著作権を侵害すると知りながら録音、録画をした場合はたとえ私的な目的だとしても違法となる。
ユーチューブなど動画投稿サイトの閲覧も「違法ではなく、刑罰の対象とはなりません」。ストリーミング視聴では、動画データをダウンロードしながら一時的に保存、再生することになるが、これについては著作権法第47条の8により著作権侵害には該当しないと定められている。
在京キー5局が番組の無料配信を検討
松本さんや東野さんがFC2で配信されたテレビ番組を視聴したケースは、「単に見ただけ」と思われるので、不正な行為とはならない。
ただ、人気番組はDVD化されたり、テレビ局が有料ネット配信したりする場合がある。こうしたコンテンツを故意にダウンロード、保存すると刑罰の対象となる。もっともこれは親告罪のため、権利者からの告訴がなければ成立しない。
「ワイドナショー」では、出演していた俳優の坂上忍さんがひとつ問題提起をした。たとえ違法でなくても、見逃したテレビ番組を無料動画配信サイト経由で視聴するのは「正規じゃないという意識があって、少し後ろめたい」というのだ。テレビ局の中には、オンデマンドでネット有料配信するサービスを運営しているところがあり、もっと普及が進むのが望ましいとの考えだ。
NHKは、籾井勝人会長が番組のネットでの同時配信に意欲を見せているが、課金制になるだろうとも話している。一方、日本民間放送連盟の井上弘会長は9月18日の会見で、見逃した番組のネット上での視聴サービスを在京キー5局で検討することで合意したと明らかにした。コマーシャル付きの無料配信を目指すという。著作権などクリアすべき問題は多いと井上会長は認めるが、実現すれば違法配信対策の有効打になるかもしれない。