2014年10月6日朝に首都圏を通過した台風18号で、首都圏の交通は大きく乱れて通勤の足を直撃した。「強風に弱く、すぐ止まる」という悪評が絶えないJR東日本の京葉線や総武線も例外ではなかった。ただ、両路線が受けた影響は、従来に比べると少ないという。
両路線では橋に防風柵を設置するなどの対策が進められ、多少効果があったようだ。総武線では速度規制による大幅な遅れはあったものの、全線の運転見合わせ(運転中止)はせずに済んでいる。
海沿いの高架橋を走るため、車体に潮風が直撃
東京駅と蘇我駅を結ぶ京葉線は海沿いの高架橋を走るため、車体に潮風が直撃しやすい。そのため、速度規制がかかったり運転が見合わせになったりすることも多く、すっかり「すぐ止まる」という悪評が定着していた。沿線には東京ディズニーリゾートや幕張メッセといったイベント会場も多く、一度運転を見合わせると影響が大きい点も、悪評が広まった一因だ。
京葉線では、07年までに橋を渡る6か所に高さ約2メートルの暴風柵を設置していたが、12年10月には、塩見~葛西臨海公園間、二俣新町~南船橋間の延べ12キロにも追加して設置した。
防風柵は鉄や繊維強化プラスチックでできており、高さはおよそ2メートル程度だ。JR東日本の基準では、風速が秒速20メートル以上の強風で速度を規制し、同25メートル以上の強風で運転を見合わせることになっている。防風柵が設置されている区間では、それぞれの基準が5メートルずつ緩和されている。
この効果は絶大で、柵完成後の12年11月から13年4月までの半年間で運転見合わせになったのは3回のみ。防風柵がなかった場合と比べると、運転見合わせの時間は92%減った計算になるという。同様に、速度規制がかかった時間も73%減少している。
総武線でも運転見合わせ時間9割減見込む
京葉線より若干内陸にある総武線も、橋では風の影響を受けやすい。14年5月には、防風柵が平井~新小岩、小岩~市川間の2か所に設置されている。京葉線でも新習志野~海浜幕張間に新たに設置された。この時点で、JR東日本では運転見合わせの時間を9割程度削減できると予想していた。
実際、この対策は台風18号による影響を減らした面があるようだ。台風18号では、京葉線は9時30分頃から13時にかけて運転を見合わせたが、総武線は速度規制などによるダイヤの乱れはあったものの、運転見合わせは行われていない。JR東日本では、京葉線以外には東海道線や横須賀線が一部で運転を見合わせた。
強風問題は地元自治体にとっても懸案のひとつで、千葉県の森田健作知事は県議会の14年6月定例会で、06年度からJR東日本に運転見合わせの時間を減らすように要望した要望を行った結果として
「JR東日本では近年京葉線や総武線、内房線で順次防風柵を設置しており、各路線とも運転見合わせ時間の削減に相当な効果が得られている」
などと答弁している。