「我らがホスト国サマ、万歳! 金を願えば金メダル、銀を願えば銀メダル......我らがオッパ(兄貴)、万歳!」
陽気なメロディー。調子のいいタイ語の歌声。テンポよく編集された映像。しかしその中身は、これでもかというほど痛烈な韓国へのあてこすりだ。
「このトムヤムクンども!」
この動画は、2014年10月1日、「マフィアレコード」を名乗るタイのユーザーからYouTubeに投稿された。
4日閉幕の仁川アジア大会では、運営をめぐりさまざまなトラブルが続き、ホスト国・韓国への批判が各国から寄せられた。特に、複数の競技で「韓国びいき」とも取れる判定が相次いだことは、当事国の大きな怒りを買った。
中でもタイは9月30日、サッカー男子準決勝で韓国と対戦したが、PKをめぐって「疑惑の判定」があり、結局これが決め手となって敗退した。タイのサッカーファンは憤激、韓国人選手のフェイスブックに押し寄せたが、これに対して韓国側のファンが「このトムヤムクンども!」(東亜日報より)などと反撃し、炎上騒ぎとなっていた。
「我らがオッパ、万歳」と題された上記の「嫌韓」動画は、この騒動を受けて作られたものだ。
「練習も特訓も必要ない、相手はインチキだから」
動画の雰囲気は牧歌的でユーモラスなのだが、歌詞は一貫して直截的で手厳しい。
「どんな試合でも韓国が相手なら、もう練習も特訓も必要ない。死ぬほど特訓したってまだ足りない。教えてやるよ、ホスト国とぶつかったら、あいつら確実にインチキしてくるから」
歌声のバックには前述のサッカーを初め、男子レスリング、女子ボクシングなどの試合の様子が繰り返し映し出される。いずれも、判定や運営が物議をかもした試合だ。日本側に不利な空調が議論を呼んだバドミントンの映像もある。
「インチキ、ひたすらインチキ、ひたすらインチキ、ただひたすらインチキ。すべてのチームをだまくらかす。ボクシング、サッカー、バトミントンでは風が吹く。人呼んで、詐欺師韓国」
動画が投稿されるや、タイではたちまち話題を呼び、多くのメディアが取り上げた。投稿者が英語字幕を付けたこともあり、日本でも3日ごろから盛んに拡散され、4日午後時点で110万回を超える再生回数を記録している。なお、韓国ではまだほとんど知られていないようだ。
ツイッターでは「#インチキ韓国」も
タイではK-POPなどの韓流コンテンツの人気が高く、セウォル号沈没事故の際にも支援の輪がネット上でも広がるなど、比較的「親韓」的な国の1つとされる。
そんなタイ人でも今回の件は腹に据えかねた様子で、この動画に限らず、ツイッター上ではタイ語の「#インチキ韓国」というハッシュタグまで登場、韓国攻撃のツイートが飛び交っている。フェイスブックではさらに過激で、韓国のネット掲示板で紹介されているところによれば、
「戦争すれば1週間で植民地にできる」
などという発言さえ出ているという。これに韓国のネットユーザー(ヌリクン)たちもフミポン国王を使ったコラージュ画像を作るなどしてやり返し、これがまたタイ側の怒りを買う――という状況で、泥仕合はしばらく続きそうだ。