正恩氏、「不自由な体」とは何を意味するのか 動静絶えて1か月、健康問題が浮上

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   北朝鮮の金正恩第1書記の動静が報じられなくなって1か月が経つ。国営メディアが正恩氏について「不自由な体」という異例の表現を使ったことから、何らかの健康問題を抱えている可能性が高いとみられている。

   具体的な病名は明らかではないが、肥満にともなって足を痛めたり、痛風になったとの説が有力視されている。

9月3日のコンサート鑑賞を最後に動静絶える

正恩氏の動静は9月3日のコンサート鑑賞を最後に途絶えている(写真は労働新聞から)
正恩氏の動静は9月3日のコンサート鑑賞を最後に途絶えている(写真は労働新聞から)

   正恩氏の動静が写真つきで最後に報じられたのは9月4日。前日の9月3日に、自らが立ち上げた牡丹峰(モランボン)楽団の新作コンサートを観覧した様子を、

「熱狂の歓呼の声を上げる出演者と観客に手を振ってコンサートの成果を祝った」

と報じていた。

   朝鮮中央通信によると、9月11日には普天堡(ポチョンボ)電子楽団の元団長の死去に哀悼の意を表すために、正恩氏が「故人の霊前に花輪を送った」という。この記事に写真はついておらず、正恩氏の様子は明らかではない。

   半月後の9月25日夜には、健康不安説が確定的になった。同日開かれた国会に当たる「最高人民会議」の場にも正恩氏は姿を見せなかったからだ。最高指導者に就任後初めてのことだ。

   同日夜には、正恩氏が7月に現場視察を行った際の記録映画を朝鮮中央テレビが放送した。映画では正恩氏は足をひきずりながら歩いているようにも見え、ナレーションでは

「不自由な体にもかかわらず人民のための指導の道を炎のように歩みつづける」

と健康状態にも言及した。政府が国内向けに何らかの説明を迫られた可能性もある。

正日氏が脳卒中後に療養した別荘にいる可能性

   この時点で、韓国メディアは「痛風説」を有力視していた。例えば朝鮮日報は、

「外国の医療陣が最近平壌入りして、金正恩第1書記を診療していることを把握した」(韓国政府関係者)
「金正恩第1書記は高尿酸血症、高脂血症、肥満、糖尿、高血圧などを伴う痛風で苦しんでいるらしい」(北朝鮮消息筋)

といった声を報じていた。

   外交専門家も、同様の見方をしているようだ。米ジョンズ・ホプキンス大学の研究者、カーティス・メルビン氏は9月末、米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」に対して、国営メディアが公表した画像を分析した結果として、正恩氏は平壌近郊の平安南道江東や、南部の元山にある専用別荘で療養していると分析している。

   特に江東の別荘は、父親の正日氏が08年に脳卒中で倒れた後に療養生活を送った場所だとされており、正恩氏も同様に療養生活を送っている可能性が高い。同誌では、

「太り過ぎなどで痛風にかかったという説が有力」

だと指摘している。

7月にも右足をひきずりながら歩く姿が放送されていた

   ただ、「不自由な体」が放送時点のことを指すのか、映画が撮影された7月時点のことを指すかは必ずしも明らかではない。実は、7月時点で正恩氏の健康状態に問題があったことは、これまでにも明らかになっている。

   具体的には、祖父の金日成主席の死去から20年にあたる7月8日に行われた追悼行事で、右足をひきずりながら歩く姿を朝鮮中央テレビが放送している。当時も様々な可能性が指摘されたが、7月初旬には正恩氏の地方視察が連日のように報じられていた。そのため、

「肥満が指摘されている正恩氏が、バランスをくずして足をつまずくなどした。金日成主席の追悼行事は、不調をおしてでも出席せざるを得なかった」

といった説が有力視されていた。

   なお、労働新聞や朝鮮中央通信は正恩氏が労働者にプレゼントを贈ったり、諸外国と電報をやり取りしたりする記事は連日のように配信している。そのため、権力基盤が揺らいでいる可能性は低いとみられる。

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