再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に基づく太陽光発電などの送電線への接続について、九州電力や東北電力、北海道電力など電力5社は、新規受け付けを当面「保留」する。
すでに、沖縄電力が2014年8月8日から、九州電力が9月25日から、北海道、東北、四国の3社は10月1日から、接続手続きを中断。現在は5社だが、「さらに拡大する」との見方もある。
太陽光発電増えると、電力の需給バランスが崩れる
2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がはじまって以降、九州では太陽光発電などの普及が急速に広がった。恵まれた日照量から太陽光発電事業者の参入が相次ぎ、FITによる設備認定量、またすでに発電中の設備量のいずれも全国の約4分の1を占める、一大拠点になりつつある。
そうした中で、九州電力には2014年3月に1か月間で、それまでの1年分に相当する約7万件もの太陽光発電事業者の接続申し込みが集中。九電は「FITに基づく買い取り価格が値下げされるのを前に、申し込んでおこうという事業者が殺到した」とみているが、「まさか、これほどとは... まったくの想定外です」と話す。
じつは、九電はFITの導入後に太陽光発電事業者の急増を受けて、2013年3月に既存の送電設備で接続可能な太陽光発電の容量の導入見通しを、2020年までに300万キロワット(kW)から700万kWへ拡大していた。
3月以降の申し込み分を加えた、7月末現在の申し込み量がすべて接続された場合、太陽光発電などの接続量は約1260万kWにものぼる。導入見通しをはるかに上回る申し込みが、九電を追い込んだようだ。
では、なぜ申し込みが増えると安定供給に差し支えるのだろう――。
電気は使用(需要)と発電(供給)が同時に行われる(周波数を一定に維持する)ことから、電力を安定的に供給するためには、その需要と供給を常時一致(需給をバランス)させる必要がある。その需給バランスが崩れたとき、安定供給が困難になるわけだ。
九電は、こう説明する。
「たとえば、春や秋の電気の使用が少ない時期の晴天時の昼間の需要は約800万kWになります。一方、7月末現在の太陽光発電などの接続申し込み量は約1260万kWですから、太陽光発電だけですでに需要を上回っています。このように周波数(需給バランス)が崩れると安定供給がむずかしくなり、大規模な停電を引き起こす可能性が著しく高まるわけです」