東京株式市場は2014年10月2日、日経平均株価が3日続落し、終値は前日比420円26銭安の1万5661円99銭まで急落した。
前日には、日本銀行が9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、これまで株高に貢献してきた「円安」が、非製造業や中小企業の景況感を暗くしていると指摘した。消費税率の再引き上げの政府判断も迫るなか、日本株は騰落の「分かれ道」にあるのだろうか。
製造業と非製造業や中小企業、「円安」格差広がる
日本株が急落した原因は、2014年10月1日に米国で初めてエボラ出血熱の感染が確認されたことで経済活動が滞るのではとの懸念が広がり、ニューヨーク株式市場のダウ工業株平均が大幅に下落したことがある。2日の東京株式市場はその流れを引き継いだことに加えて、欧州景気の先行き不透明感や、香港の民主化デモなど地政学的リスクの高まりもある。
さらに、外国為替市場で円安ドル高が進んだこともあって、日本株の「売り」を誘った。これまで企業収益の上振れ期待から買われていたトヨタ自動車やソニーといった輸出関連株を中心に、ほぼ全面安に転じた。
1日の外国為替市場は円売りドル買いが加速して、東京市場で一時1ドル110円09銭まで円安が進んだが、その後は米景気の先行き懸念から円高ドル安に転じ、2日の東京市場は1ドル108円76銭近辺で推移した。
日経平均株価は、9月25日に年初来高値(1万6374円14銭)を付けたが、そこから1週間足らずで712円15円も急落したわけだ。
そうしたなか、最近、個人投資家などの投資心理を冷やしているのが「円安」だ。これまではアベノミクスの「立役者」のようにいわれ、輸出関連株を中心とした株高をけん引してきたが、9月には安倍晋三首相自らが「円安にはプラスもマイナスもある。地方経済や中小企業に与える影響をしっかり注視していきたい」と述べ、円安の「負」の影響を初めて口にした。
貿易赤字は8月で、26か月連続。9月の日銀短観でも、消費増税の影響が続く非製造業や中小企業と、円安の恩恵を受ける製造業とで景況感に明暗が分かれたことから、「行き過ぎた円安」への警戒感が指摘されている。
そろそろ、「円安→株高」の効果は期待できなくなるのかもしれない。
エコノミストは「楽観視」「深刻な事態にはならない」
日銀短観は3か月ごとに、最近の景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた「業況判断指数」(DI)で、企業の景況感を調査する。
それをみても、たしかに大手企業と中小企業、製造業と非製造業のあいだに「格差」が生じてきたようだ。
「大企業・製造業」のDIはプラス13と、前回調査(6月)のプラス12から1ポイント上昇し、わずかながら2四半期ぶりに改善した。なかでも、「自動車」は7ポイント上昇のプラス20。国内販売は低調ななか、海外販売は好調で、円換算で海外収益が膨らんだ。
半面、「大企業・非製造業」のDIはプラス13と前回に比べて6ポイント低下。2四半期連続で悪化した。このうち、「小売り」は消費増税の影響で、2ポイント低下のマイナス1。夏場の天候不順も重なり、内需型の企業マインドは悪化した。
また、中小企業は製造業、非製造業とも2期連続で悪化。「良いのは大企業のみで、(海外売上比率の低い)中小企業に(円安の)恩恵は及んでいない」との声は、日に日に高まっている。
とはいえ、エコノミストらは日本株のゆくえについて、楽観視している。
エコノミストやストラテジストの多くが「株価の下げの余地は限定的」とみていて、円安基調を支えに、「3月期決算企業の2014年上期(4~9月期)業績の上方修正への期待が高まっている」との見方が支配的。年末に向けての日経平均株価の水準も、「1万5500~1万7000円」の幅で予測する向きが多く、政府が消費税率の再引き上げに踏み切ったとしても、「大崩れはない」という。
第一生命経済研究所経済調査部の藤代宏一氏は「円安ドル高の流れは当面変わらないですし、日本株の上向き基調は続きます。(大幅な下落があったからといって)そんな深刻な事態にはならないでしょう」と、話している。