シラスウナギ2割削減で合意 「うな重」のお値段はどうなるのか

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   ニホンウナギの資源管理を協議していた日本と中国、韓国、台湾が、養殖に使う稚魚(シラスウナギ)の養殖量を、2014年比で2割減らすことで合意した。14年11月に発効する。ニホンウナギの資源管理で初の国際的な枠組み合意だ。

   稚魚の量が減少傾向にあるニホンウナギについては、輸出入の規制対象になる可能性があり、今回、自主規制に動くことで国際的な規制回避に向け、先手を打った形だ。ただ、2割削減ではとても追いつかないといわれ、そもそも強制力のない合意の実効性を疑問視する声もあり、遠からず追加規制に動くことになると見られている。

国際取引が規制される事態は避けたい

収穫量減、値上がり、ウナギはもはや「高嶺の花」(画像はイメージ)
収穫量減、値上がり、ウナギはもはや「高嶺の花」(画像はイメージ)

   世界には19種のウナギがいるというが、日本で食べられているものの多くが東アジアに生息するニホンウナギ。秋に川を下った親魚はグアム島に近い深海で産卵し、ふ化した後に海流に乗って日本などにたどり着く。ただ、市場に出回るものは、大半が稚魚(体長5センチ前後)を捕って養殖したもの。この稚魚が乱獲で大幅に減り、国内の捕獲量は1963年の232トンのピークから減り続け、2013年は5.2トンにまで減少。稚魚または成魚、加工品を主に中国と台湾から輸入して国内消費を賄っている。

   本来なら稚魚の捕獲量を規制する方が効果的だが、密漁もあって難しいため、今回は次善の策として、養殖のため池に投入できる稚魚の年間上限を定めることにした。11月以降の漁期に、日本21.6トン、中国36トン、韓国11.1トン、台湾10トンを上限にすることが決まった。

   今合意の背中を押したのは国際自然保護連合(IUCN)によるニホンウナギの「絶滅危惧種」指定(今年6月)。これ自体には法的強制力はないが、IUCNの判断は希少生物などの国際取引を規制するワシントン条約の枠組みで、新たな規制対象を検討する際の有力な判断材料になるので、このままでは、2年後の2016年の同条約締約国会議でニホンウナギの輸出入が禁止される可能性も出てきた。

   日本は、ニホンウナギの7割を消費するといわれる世界最大の消費国として、資源管理の必要を感じ、2012年からは中国、台湾に非公式協議を呼びかけてきた。中台は当初、規制に慎重だったが、親ウナギの多くを日本に輸出していることから、IUCNの判断を受け、国際取引が規制される事態は避けたいとの思惑から日本と足並みをそろえたようだ。実は、よく似た先行例があり、地中海のクロマグロ資源管理機関が大幅な漁獲量の削減を打ち出し、2010年のワシントン条約締約国会議で禁輸措置を免れている。今回、日中台などはこれを参考にしたとみられる。

今後も値上がりを覚悟せざるを得ない

   では、日本のウナギ養殖業者、価格などへの影響はどの程度だろうか。

   既に乱獲で稚魚は大幅に減っていて、日本の稚魚投入量は2013年に12.6トンと過去最低に落ち込んだ。2014年は27トンまで戻したので、そこから2割減の21.6トンという上限は、2013年を大幅に上回っており、にわかにひっ迫することはなさそうだ。ただし、零細が多い養殖業者の経営への影響は避けられそうもない。6月に成立した内水面漁業振興法により、11月からウナギの養殖は届け出制になる。水産庁は21.6トンを都道府県ごとに割り振った上で、過去の実績などを基に業者ごとに割当量を決める方針だが、公平性をめぐり不満が出る可能性もある。

   また、価格への影響は必至だろう。今年は前年より捕獲量が多かったため値下がりしたとはいえ、ここ数年でウナギ店などの仕入れ値は2倍以上に上がっており、国際的な規制で、今後も値上がりを覚悟せざるを得ないとの見方が一般的だ。

   規制上限が、今回の決定で済むのかという問題もある。ニホンウナギはまだ生態が解明途上で、産卵から成長のメカニズムもようやくわかってきたところ。このため、卵から手掛ける完全養殖は実用化されていないだけでなく、そもそも、どれだけ資源量があるのかすら、はっきりしていない。

   今後、科学的なデータに基づき、どのくらいまでならウナギを消費しても資源が枯渇していかないかを突き止めることになるが、農林水産省自身、「(今回の合意で)完全に資源の保存管理ができるとは考えていない」と認めている。水産庁内にも「今回の削減は踏み込み不足」との声があり、2016年以降の一段の削減量の積み増しをにらんで関係国・地域の協議再開をめざすことになりそうだ。その中では、今回の「紳士協定」にとどまらず、条約や協定など法的拘束力のある枠組み作りも協議することになる。

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