米アップルの「アイフォーン(iPhone)6」「6 Plus」が発売されてから10日余り。売れ行き好調の影で、旧機種「5s」が別の形で注目されているという。
「在庫一掃」をねらってか、一定条件のもとで端末料金を無料にする販売店が少なくないのだ。画面サイズが大きくなった「6」「6 Plus」を敬遠して、「タダなら5sで十分」という購買層を引き付けるかもしれない。
端末代無料の「一括0円」にキャッシュバック
「iPhone5s 一括0円」。
ツイッターには、多くの携帯電話販売店がこうしたキャンペーン情報を発信している。一定額を還元する「キャッシュバック」を組み合わせ、契約すれば1台当たり2万円提供というのも珍しくない。2台契約で11万円を現金支給という、破格ともいえる誘い文句もある。端末の容量は16GBだけでなく、32GBの機種を対象に含む店も見つかった。
ねらいは携帯電話番号ポータビリティー(MNP)、つまり通信キャリアを「乗り換える」客。「au」ブランドのKDDIとソフトバンクモバイル(SBM)の販売店の宣伝は多いが、NTTドコモは探した範囲では出てこなかった。
「一括0円」は文字通り、端末代が無料という意味だ。各社iPhoneの販売では、「実質0円」とうたっている。新規で最少容量の16GBモデルを2年契約で購入し、端末代を24回に分割して支払う場合、1か月当たりの金額と同額を割り引くのだ。ところが、「一括0円」であれば分割払いが発生せず、月々の割引だけが適用される、当然支払額は「実質0円」のときより少ない。キャンペーンの条件にオプションサービスの加入を義務づける店はあるが、例えばSBMなら「5s」16GBの端末代は6万円ほどなので、無料のメリットは大きい。
だが、全販売店が提供しているわけはない。都内の「auショップ」で尋ねると、店員は「当店ではそのような契約はございません」と告げた。SBMの店舗でも、MNPでiPhone5sを契約しても「一括0円」にはならないとの説明だった。一方で、店舗名まではっきりと出して「一括0円、キャッシュバックも」と堂々アピールしている店があるのも事実だ。
販売店による対応の違いは、モバイル通信事情に詳しい青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏も指摘する。「関係者から聞いた」と前置きしてこんな話をした。特定の代理店系列の場合は店舗数や販売台数が多いので、iPhoneの在庫を多く抱えている。一方通信キャリアは、アップルからiPhoneの販売に厳しいノルマを課せられている。新型iPhoneが発売されて旧機種が残っていると、代理店はノルマ達成のため、場合によっては赤字覚悟で大サービスに打って出るのではないかというのだ。
「片手に収まり、ポケットにも入る大きさ」にこだわる人はいる
とはいえ、こうしたあからさまな「大安売り」を通信キャリア側は推奨しておらず、あくまでもキャンペーン実施の可否は代理店の判断によるものだろうと木暮氏は分析する。
今回のiPhone6と6 Plusは、画面サイズがそれぞれ4.7インチ、5.5インチと従来から拡大した。この大画面化を歓迎しない人もいるという。9月27日付の「NEWSポストセブン」の記事は、片手では操作しきれない「6」「6 Plus」を敬遠し、あえて「5s」を求める利用者を紹介していた。「6 Plus」に至っては、タブレット型端末「iPadミニ」と変わらないと嘆く声も聞こえるそうだ。
木暮氏も新型iPhoneに触れてみたが、「指1本で楽々操作というわけにはいかず、『らしさ』を失ったようで残念」と感想を述べた。もちろん基本的な性能は旧モデルより優れているが、画面サイズに関しては利用者間で賛否両論分かれているとみる。旧機種とはいえ「5s」が出たのは1年前。「何が何でも最新iPhoneが欲しい」という考えでなければ、機能的には十分こと足りそうだ。
スマートフォンのトレンドを見ると、世界的には画面の大型化が進んでいるのは間違いない。それでも「片手に収まり、ポケットにも入る大きさ」にこだわる人はいるだろう。iPhoneの新機種登場時に、販売店が旧モデルの「在庫一掃セール」を行うのは過去にも例があるようだが、今回は画面サイズの好みから「むしろ5sを選ぶ」という利用者が一定数いても不思議ではない。