噴火の恐れがあるのは、活火山の1つである富士山も例外ではない。夏の登山シーズンに今回のような水蒸気爆発が起きたら、どれだけの被害が想定されるのだろうか。
長野、岐阜県境にある御嶽山の噴火で、報道によると、山頂付近にいた登山者のうち死亡が確認されたのは、2014年9月30日夕までに12人に上った。なお、心肺停止のまま24人が火山灰の中に倒れているとされている。
御嶽山の山頂には約200人がいたが...
水蒸気爆発が起きたときは、目撃情報によると、山頂に約200人の登山者がいたという。近くの山小屋に避難して無事だった人もいるが、火山弾が降り注ぐ中で逃げ遅れた人も多かったらしい。行方不明が40人超との情報もあり、さらに犠牲者が増える恐れもある。
今回は、9月上旬に火山性微動が確認されたものの、噴火を予知することはできなかった。専門家によると、マグマの噴出と違って、地下水がマグマの熱で膨張して起きる水蒸気爆発の予知は難しいという。
日本には、110の活火山があり、そのうち気象庁が24時間監視している火山は47ある。富士山もその1つだ。1707年の宝永噴火から約300年も沈黙しており、いつ噴火してもおかしくないとされている。
富士山は、7~9月が登山シーズンで、多いときは1日に1万人ほどが訪れている。そこで、もし山頂付近でふいに水蒸気爆発があったとすると、被害はどれくらいになるのか。
御嶽山は、9、10月の紅葉シーズンに、多いときは1日に5000人ほどが詰めかけるといい、富士山の方が倍ぐらい多い。とすると、被害もそのぐらい増える可能性もあるが、場合によってはもっと深刻な状況になりそうなのだ。
山梨県の富士山保全推進課が14年のお盆時期に、山頂に集まる登山者数を調べたところ、8月19日早朝のご来光時に、1450人もいることが確認できた。
山梨県「爆発があれば、大変なことになる」
この登山者の多さから、山梨県の観光資源課では、考えられる事態についてこう話す。
「富士山でも、単発的な水蒸気爆発については、まだ被害想定を出していませんが、もしご来光時に爆発が起きれば、大変なことになると思います」
山頂付近には、山小屋や売店の数は多く、隠れるところはあるのではないかという。しかし、浅間山山頂などにあるような避難用シェルターはない。登山道の途中に避難所はあるが、それは落石や落雷を想定したものだそうだ。また、山小屋などに従業員用のヘルメットはあっても、登山者用の備えはない状態になっている。
さらに、行方不明者を捜索するときに必要な登山届についても、出さない人が多いようだ。登山者が多すぎて対応しきれないため、催促などが行われていないからだ。
登山者が増え続けると危険があるため、富士山への入山規制の導入も議論されているが、まだ煮詰まっていないのが現状らしい。
富士山のマグマは、地下数キロまで上がっている御嶽山とは違い、地下深くにあるとされ、水蒸気爆発の可能性は低いともされている。しかし、富士山にも地下水がたまっているため、その危険はあると専門家も指摘している。自衛のためには、噴火についての情報を事前に広く集め、万が一に備えてヘルメットを持参するなどの手を打つしか現状ではなさそうだ。