「関係者を厳正に処罰」にも批判
申し入れ書が最も重視しているとみられるのが、朝日新聞の今後の対応だ。木村社長は、会見で関係者を「厳正に処罰」すると明言している。この点を、申し入れ書は
「不当な処分はなされてはならず、もしかかることが強行されるならばそれは、現場で知る権利への奉仕、真実の公開のため渾身の努力を積み重ねている記者を萎縮させる結果をもたらすことは明らかです」
と批判している。今回の問題をめぐっては、朝日新聞社は9月12日に、前出の杉浦取締役を解職したのに続いて、9月19日には市川速水報道局長、渡辺勉編成局長、市川誠一特別報道部長の3人を解任する人事を発表している。
新聞史に残る最近の大誤報としては、産経新聞が11年7月に「中国の江沢民前国家主席死去」と報じた件が知られている。この大誤報の出稿は東京本社の幹部が主導したとみられており、処分は熊坂隆光社長が減俸50%(1か月)、斎藤勉専務(編集担当)が同30%(3か月)、飯塚浩彦取締役(東京編集局長)が同30%(3か月)のみ。中国総局をはじめとする現場の記者は「おとがめなし」だった。
吉田調書をめぐる誤報については、朝日新聞が同社の第三者機関「報道と人権委員会(PRC)」に審理を申し立てている。PRCは9月17日に初会合を開き、検証作業を始めている。今後、現場の記者に対する処分が焦点になりそうだ。