大阪を拠点にLIVE活動などを展開するシンガーソングライター、山口采希(あやき)さん(23)が、話題になっている。
無名ともいえる山口さんの、発売されたばかりの新曲「空と海の向こう」がいきなりオリコンデイリーシングルランキング(2014年9月23日付)で7位を獲得したからだ。
「シンプルで純粋な気持ちを歌に、と思いました」
「空と海の向こう」は、山口采希さんの4枚目のシングルとして2014年9月24日に発売。瞬く間にトップ10入りを果たした。1月以降、LIVEなどで歌ってきたが、3月に秋のニューシングルとして発売することが決まり、準備をはじめていた。
この曲は、山口さんが北朝鮮の拉致被害者の救出を願って作詞作曲した。「待ってて迎えに行くよ」「会いたいよ、今」と、拉致被害者とその家族の想いを切々と歌う。
曲をつくったときの気持ちを、山口さんは「拉致被害者のご家族の方々や支援されておられる方々の想いを知れば知るほど、私自身も何か出来る限りのことをしなければならないと思いました。長く解決できずにきた問題ですから、解決に向けてはとっても複雑で難しい問題がたくさんあると思います。だからこそ、そんな時こそ、シンプルで純粋な気持ちを歌に、と思いました」と話し、拉致被害者やその家族の純粋な想いや願いと、解決に向けてのさまざまな想いが「音楽にのって広がることができれば、との想いでつくりました」と振り返る。
所属事務所のフィズミュージックも、「音楽を通して少しでも世論の後押しになったらとの思いです。政治的にみられがちですが、率直な思いを楽曲に込めただけ」と話している。
「空と海の向こう」は、6月にYouTubeにデモ音源が公開されたが、オリコンランキングでトップ10入りしたことで、じわりと再生回数を増やしている。
インターネットには、
「40年...... 一刻も早い救出を願うだけです」
「本当に切ない曲。拉致の問題が少しでも知らない人にも感心を持って頂き、みんなで必ず全員取り戻す、みんなで迎えに行く、ということを願ってます」
「素敵な歌です...。皆で拡散しましょう!全員取り戻すまで」
「拉致被害者やご家族の事を想うだけで心が引き裂かれそうです。いっしょに頑張りたい。そう思わせてくれる曲ですね」
「応援のためにも購入だな! 忘れてはならないもんな」
といった声がつづられている。
山口さんが歌う「空と海の向こう」のレーベル収益は、拉致問題を支援する組織・団体に寄付されるという。
「うれしかったけど、身の引き締まる思いです」
拉致問題をめぐっては、北朝鮮側による拉致被害者の再調査が難航。被害者家族の高齢化が進み、限られた時間の中で政府も「実効性のある調査が進むことが大事。全力で取り組む」としているが、周囲は気を揉むばかりだ。
ひとつの目標としていたオリコントップ10入りを果たしたことについて、山口采希さんは「これまで拉致問題解決へ向け、絶やすことなく声をあげてこられた皆さんの想いが、このような形として現れたのだと思います。順位を知った時はとっても嬉しかったのですが、今は拉致問題解決へ向けての『手段』を一つひとつ手にして行かなければならないことを想うと、とっても身の引き締まる思いです」と話す。
そんな山口さんだが、彼女の歌はちょっと変わっている。明治時代から太平洋戦争の終わりまで日本の教育の柱だった「教育勅語」を現代風にアレンジした「大切な宝物」(2012年9月)や、自衛隊への感謝の言葉を歌った「ありがとう、じえいたいさん」(2014年5月)がある。
LIVEでは、祖父の影響で覚えた軍歌や唱歌もレパートリー。山口さんは、「祖父や祖母が生きてきた時代をもっと知りたいという想いを強く持っていますし、そして知れば知るほど学ばなければならないことがたくさんあって、今の私にとって大切なことばっかり、と気付くんです」と話す。
「未来を築いていくために、一度振り返ろうよ」が歌に共通したテーマで、今後もそのスタイルを貫くという。
山口さんはふだん、大阪の商業施設や名神高速道路・吹田サービスエリアのフリーLIVEなどで演奏。2014年10月26日には大阪ブルーリボンの会の拉致問題街頭活動で、署名を手伝いながら、「空と海の向こう」を歌う。