テレビ映像ではなぜ車のナンバーにぼかしが入っているのか

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   交流サイト(SNS)やブログに公開した写真に自家用車が写り込んでいた場合、こんな不安が頭をよぎったことはないだろうか。

「車のナンバーを見て、誰かが悪用するかもしれない」。

   テレビの映像やネット上の画像では、ナンバープレートにぼかしをいれて数字が判別できないようにする場合がある。では実際に、車のナンバーだけで所有者を特定することは可能なのか。

「自動車登録番号」と「車台番号」の両方が必要

車のナンバーが写るとつい神経質に...
車のナンバーが写るとつい神経質に...

   道路運送車両法第22条は、誰でも国土交通大臣に対して、登録事項その他の自動車登録ファイルに記録されている事項を証明した書面(登録事項等証明書)の交付を請求できると規定している。自動車の所有権の公証等が主な目的だ。最寄りの運輸支局か自動車検査登録事務所に出向いて、登録事項等証明書の交付請求ができる。オンラインでも、自動車のナンバーや型式、所有者名、住所といった登録情報の提供が受けられる。

   だが無条件で請求できるわけではない。近年はこの交付制度で得た情報を自動車窃盗など犯罪に悪用するケースがあり、また個人情報保護対策の観点から、請求者の本人確認を徹底している。申請者は、運転免許証をはじめ氏名や住所が確認できる証明書の提示が求められ、請求理由も示さねばならない。理由に正当性が認められなければ、請求は拒否される。

   もうひとつ、重要な条件がある。申請書に「自動車登録番号」と「車台番号」の両方を記載しなければならないのだ。前者は、いわゆるナンバープレートに記載されている番号。一方、後者は車両の識別番号を指し、車によって場所は違うがエンジンルームや車内に打刻されている。車検証にも記載がある。車のナンバーの情報は、第三者が入手しようと思えばそれほど難しくないだろう。テレビでたまたま見た車の映像や、インターネット上に公開された写真が情報源となり得る。だが車台番号は、特定の車の中を調べるか車検証を手に入れるかしなければ、原則的には分からない。

   国交省自動車局に念のため確認すると、「ナンバープレートの番号だけでは、登録事項等証明書の交付請求はできません」と回答した。車台番号を知り得るのは、原則的に車の所有者やその家族など狭い範囲の人間関係に限定されることから、請求時にこれを求めることで登録情報の悪用防止を図るのだという。

関西テレビ「風景撮影で映ったナンバーはモザイクの必要なし」

   車のナンバー情報だけでは、少なくとも「正規のルート」を通じて所有者の個人情報を入手するのは不可能だ。それでもテレビ局がナンバープレートにモザイクをかけているとすれば、どんな理由があるのだろうか。

   関西テレビの「番組制作ガイドライン」に、車のナンバーに関する「モザイク・ぼかし」の記述があった。主要なテレビ局はどこも「放送倫理」や「ガイドライン」を策定し、プライバシーへの配慮をうたっているが、ここまで踏み込んで規定、公表しているのは珍しい。

   ガイドラインの冒頭で「風景撮影で映ったナンバー、事故を起こした車のナンバーについてはモザイクの必要はありません」としている。ただし「事故車両が盗難車であることが明らかな場合は、本来の持ち主に被害が及ぶことも考えられるのでモザイク処理します。違法駐車の一斉取り締りなどではモザイク処理もやむを得ません」と説明。また、所有者が有名人の場合は「プライバシー保護と犯罪防止の観点からモザイクをかけます」とある。

   2014年9月24日朝に放送された、民放各局の情報番組を見比べてみた。この日は日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日それぞれが、神戸市長田区で行方不明となっていた女児の遺体が発見されたニュースを報じていた。現場付近は住宅が多く、比較的交通量の多い道路が近いこともあり、カメラには事件とは関係のない車がしばしば映し出されていた。だがどの番組も、ナンバープレートの数字にモザイク処理を施すようなことはしていなかった。ことさら車のナンバーを強調してはいないが、たまたま映った程度であれば放送上問題なしと判断したのだろう。

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