韓国・仁川で行われているアジア大会の男子サッカーで、八百長の疑いが浮上した。スイスを拠点にするスポーツの不正賭博監視団体が、シンガポール紙「ザ・ニューペーパー」に告発したのだ。
世界の強豪が顔をそろえるワールドカップ(W杯)とは異なり、アジア大会は出場国のレベルの差が大きい。優勝など望むべくもない弱小チームの場合、八百長を持ちかけられやすい環境にあると専門家は指摘する。
3分周期で失点、10分足らずで4点奪われた試合も
監視団体によると、男子サッカー1次リーグで、終盤に連続ゴールが決まった試合が複数あったという。ここに疑惑の目が向けられた。
「ザ・ニューペーパー」は詳細の解説を紙面に譲ったため電子版ではこれ以上読み取れないが、AFP通信が2014年9月26日、同紙を引用する形で、「賭けに参加した人たちはいくつかの試合で、終了間際の数分間に得点が入ることに確信を持っていた」という監視団体幹部の話を伝えた。掛け金の動きが異常だったことも挙げている。そのうえで「同様の手法で多くの試合が操作された。仁川にある同じブローカーの仕業だろう」と推測したという。
具体的にどこの国がどの試合で八百長行為をはたらいたのかは語られていない。ただ、「試合終盤に立て続けにゴールが決まった試合」は複数あった。9月14日のサウジアラビア-ラオスでは、サウジが後半30分、41分、ロスタイムに得点を重ねて3-0で勝った。ラオスは9月17日のマレーシア戦でも後半31分、34分、38分と3~4分の短い周期で失点している。
インドネシアの場合、9月15日の東ティモール戦で後半33分、37分、39分、42分と10分足らずで4得点のゴールラッシュを決めた。一方で9月22日のタイ戦は後半31分、37分、ロスタイムに点を奪われ大敗した。
もちろんこれだけで、該当国が八百長したとは言い切れない。W杯ブラジル大会では、準決勝でドイツがブラジルに対して前半のわずか6分間に4ゴールを決めた例もある。サッカージャーナリストの石井紘人氏は、選手の疲れがピークとなる試合終盤は得点が入りやすい時間帯ではあると説明した。対戦国の間に実力差があった、試合日程の兼ね合いから先発メンバーを大幅に入れ替えたなど、さまざまな要因も考えられる。国際サッカー連盟(FIFA)の最新ランキングを見ると、大量失点したラオスは169位、東ティモールは193位で、サウジやマレーシア、インドネシアからすれば格下だ。アジア大会の場合は23歳以下の選手が主体だが、代表レベルと大きな違いはないとみられる。