廃炉でダメージを受けるのは交付金がなくなる立地自治体
ただ、廃炉には大きく、3つの課題がある。第1が電力会社に巨額損失が出ること。本来、原発は廃炉が決まった時点で資産価値がゼロになり、電力会社はその分を損失として計上する必要がある。前記8基すべてを廃炉にすると、その時点で計2000億円超の損失が一度に発生するとされ、廃炉にしたくてもできない事態になりかねない。
そこで、経産省は昨年、会計ルールを見直し、原子炉格納容器など廃炉に必要な施設や設備は資産としての価値が残っているとみなし、何年もかけて分割して処理できるようにするなどの対策を取ったが、それでも、廃炉を決めた年度に1基あたり百億円単位で特別損失が出る。
第2に、解体後の放射性廃棄物の処分が決まっていないという問題がある。電力会社の試算では、110万キロワット級の原発を廃炉にすると建物など約50万トンの廃棄物が出て、うち1.3万トンが放射性廃棄物だが、処分場のめどは立っていない。なかでも、制御棒や原子炉内の部品など、放射能レベルが高い廃棄物の処分には百年単位の長期管理が必要だが、処分に関する国の基準作りは進んでいない。
廃炉で国からの交付金がなくなる立地自治体への支援策という3つ目の課題もある。
いずれにせよ、電力各社は廃炉と運転延長に要する費用を天秤にかけ、最終的に判断することになる。