生活保護受けながらネットで1000万円超荒稼ぎ 逮捕の男は本当に「記憶喪失」なのか

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   テレビドラマを動画サイトに違法投稿し、広告収入などで1000万円超を稼いだとして逮捕された男が、「記憶喪失」と報じられて話題になっている。どうやってそんな技術を身に着けていたのか、といった疑問があるからだ。

   警察車両に乗った男は、テレビ映像を見ると、長髪で肌は浅黒かった。

「ネット回線の契約とかどうしてんだ?」

   報道によると、静岡県三島市のマンションに住んでいる無職の男は、2008年3月に静岡県熱海市内で意識不明のまま倒れているのが見つかり、入院した県内の病院で記憶喪失の1つである「全生活史健忘」の症状だと診断された。この症状は、大きな精神的ショックなどから起こり、日常生活の知識はあるものの、自分の生活歴を忘れてしまうとされている。

   このため、本名や年齢は不詳となっており、「鈴木太郎」の仮名で、外見などから現在は36歳とみなされている。

   男は、群馬、栃木両県警によるサイバーパトロールで浮上し、著作権法違反の疑いで9月24日に逮捕された。13年6月から14年3月まで、フジテレビ系ドラマ「失恋ショコラティエ」など9作品を動画サイト「FC2」に投稿し、不特定多数に見られるようにしていたとされている。

   動画投稿は、12年11月から続けていたといい、その数は約2000本もあった。銀行口座からは、この間に1000万円超を稼いでいたことも分かった。調べに対し、「生活費を稼ぎたかった」と供述しているという。しかし、男は、神奈川県から生活保護を受けて1人暮らししていたと報じられている。

   ネットでもニュースが流れると、「記憶喪失」の男がしたという犯行に驚きの声が上がった。

   「ネット回線の契約とかどうしてんだ?」「記憶喪失じゃ銀行口座作れないだろう」といったものだ。そのことから、「ただ記憶を失ってるフリしてるだけじゃないのか?」といった憶測まで出ていた。

記憶は、数年経てば元に戻ることも

   神奈川県の小田原保健福祉事務所によると、男は、2か月ほどして退院するまで、倒れた先の熱海市が医療費も含めた生活保護費を支給していた。2008年6月からは、神奈川県湯河原町のアパートに住んでいることになっており、県が町を通じて現在まで男に生活保護費を支給している。

   事務所の生活福祉課では、男がネット回線の契約をしていたり、銀行口座を作ったりしていることに驚きを示す。

   「戸籍を作っておらず、身元保証もありませんので、いずれも難しいはずだと思います。銀行通帳を持っていないことになっていましたので、生活保護費は現金で毎月渡していました」

   男が三島市に住んでいることも承知していないという。マンション在住ということは、稼いだ1000万円超から費用を出した可能性もあるが、今後の捜査で明らかにされるとみられる。

   実は、男の国籍についても不明だという。男は、日本語がよく分からないことがあり、英語交じりで話すからだ。

   男は、「記憶喪失」のふりをしている可能性はあるのだろうか。

   精神科医の町沢静夫さんは、その点については、こうみる。

「自分の名前や生活歴が分からないというのは深刻で、なかなかウソをつけるものではありません。全生活史健忘でも、日常生活の知識を生かせば、ネット契約したり口座開設したりはできるでしょう」

   ただ、この症状はかなり珍しく、日本で毎年1~2人が出るくらいだという。記憶については、数か月で戻ることはあまりないものの、数年経てば元に戻ることもあるとしている。

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