記憶は、数年経てば元に戻ることも
神奈川県の小田原保健福祉事務所によると、男は、2か月ほどして退院するまで、倒れた先の熱海市が医療費も含めた生活保護費を支給していた。2008年6月からは、神奈川県湯河原町のアパートに住んでいることになっており、県が町を通じて現在まで男に生活保護費を支給している。
事務所の生活福祉課では、男がネット回線の契約をしていたり、銀行口座を作ったりしていることに驚きを示す。
「戸籍を作っておらず、身元保証もありませんので、いずれも難しいはずだと思います。銀行通帳を持っていないことになっていましたので、生活保護費は現金で毎月渡していました」
男が三島市に住んでいることも承知していないという。マンション在住ということは、稼いだ1000万円超から費用を出した可能性もあるが、今後の捜査で明らかにされるとみられる。
実は、男の国籍についても不明だという。男は、日本語がよく分からないことがあり、英語交じりで話すからだ。
男は、「記憶喪失」のふりをしている可能性はあるのだろうか。
精神科医の町沢静夫さんは、その点については、こうみる。
「自分の名前や生活歴が分からないというのは深刻で、なかなかウソをつけるものではありません。全生活史健忘でも、日常生活の知識を生かせば、ネット契約したり口座開設したりはできるでしょう」
ただ、この症状はかなり珍しく、日本で毎年1~2人が出るくらいだという。記憶については、数か月で戻ることはあまりないものの、数年経てば元に戻ることもあるとしている。