「大槌祭り」華やかに【岩手・大槌町から】(63)

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   大槌町の「大槌まつり」が2014 年9月19日から3日間、大槌稲荷神社の宵宮祭、神輿(みこし)渡御、小鎚神社の宵宮祭、神輿渡御の順番で繰り広げられました。快晴の下、鹿子踊(ししおどり)、大神楽(だいかぐら)、虎舞(とらまい)などの郷土芸能が勇壮、華麗な舞で祭りを盛り上げました。鎮魂の祈りと復興への希望を託した祭りが終わり、秋色が一段と深まってきました。


川に入った神輿=2014年9月21日、「小鎚川」の御旅所
川に入った神輿=2014年9月21日、「小鎚川」の御旅所

   19日夜の大槌稲荷神社の宵宮祭。郷土芸能の笛、鉦(かね)、太鼓が鳴り響き、虎舞では、ラップ風の掛け声が夜空にこだましました。20日は神輿渡御。昨年、神輿が出なかったため2年ぶりになります。神輿は郷土芸能10団体とともに長い隊列を組み、11か所の御旅所(おたびしょ)を回り、夕方、神社に戻りました。


向川原虎舞=2014年9月20日、小鎚神社の宵宮祭
向川原虎舞=2014年9月20日、小鎚神社の宵宮祭

   20日夜の小鎚神社の宵宮祭では、参加する郷土芸能団体がさらに増えました。境内の広場と拝殿前に分かれて演舞し、観客が二重三重に囲んで鑑賞しました。21日は約100人の担ぎ手による2基の神輿が、ご神体を載せて小鎚神社を出発。郷土芸能17団体が神輿を挟みました。「役場」「桜木町」「臼澤伝承館」などの御旅所を経由して小鎚川に入り、神社に戻るコースです。

   午後4時に小鎚川に着いた2基の神輿は、川の両岸や、川を見下ろす橋の上に鈴なりになった人たちに見守られながら、入水しました。神輿が川の中を行きつ戻りつし、出水。神輿は神社に戻り、午後5時半すぎに、ご神体を本殿に移し、長い一日を終えました。笑顔で握手を交わす人、こみあげてくる涙をぬぐう人。川に入ったため、担ぎ手の衣装は泥だらけ。担ぎ手による社人会(しゃにんかい)は、3本締めで締めくくりました。


川に入った神輿の見物に訪れた観客=2014年9月21日、「小鎚川」の御旅所
川に入った神輿の見物に訪れた観客=2014年9月21日、「小鎚川」の御旅所

   大槌稲荷神社の神輿渡御でも、小鎚神社の神輿渡御でも、多くの人たちが沿道で神輿を迎え、手を合わせたり、関係者に清めの塩やお花代を手渡したりしました。桜木町で神輿を迎えた八幡幸子さん(63)。「復興がなかなか進まないけれど、祭りで元気づけられる。早く、まちが活性化してほしい」


神輿を迎えた人たちは神輿がまく塩を用意し手渡しました=2014年9月21日、大槌町
神輿を迎えた人たちは神輿がまく塩を用意し手渡しました=2014年9月21日、大槌町

   20日夜、「大槌町応援職員の会」が年1回の総会を祭りに合わせて町役場多目的会議室で開催しました。一方、「おおつちまつりで会いましょう!」を企画した町社会福祉協議会は、三陸花ホテルはまぎくで、交流会を開きました。この企画には岩手県内の盛岡、花巻、北上市に避難している町民49人が参加。花巻市の小林敏子さん(72)は「太鼓、笛の音が心にしみた。故郷が懐かしく涙がこぼれた」と感想を述べました。


   大槌町は郷土芸能が盛んで、町郷土芸能保存団体連合会には19団体が加盟しています。後継者難に直面している団体も少なくなく、伝承に知恵を絞っています。例えば金澤神楽は、20人ほどいた男性中心の踊り手が、震災前、4人にまで減ってしまいました。神楽を守ろうという関係者の熱意で、踊り手を女性や地区外に広げて窮地を脱しました。現在、メンバーは15人。踊り手は全員女性です。


金澤神楽=2014年9月21日、「まごころ弁当」の御旅所
金澤神楽=2014年9月21日、「まごころ弁当」の御旅所
臼澤鹿子踊=2014年9月21日、「桜木町」の御旅所
臼澤鹿子踊=2014年9月21日、「桜木町」の御旅所

   臼澤鹿子踊を中心に大槌町内の郷土芸能を調査している国立民族学博物館教授池谷和信さん(55)は、こう分析しています。「郷土芸能は、復興に向けて、地域をつなぎ、世代をつなぎ、町の宝ともいうべき存在になっているのではないでしょうか。伝統芸能は、変化せずに消滅してしまうのではなく、大槌町のように、変化しながら伝承されていく柔軟性が求められているのではないでしょうか」

(大槌町総合政策課・但木汎)


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