米アップルの「アイフォーン(iPhone)6」「6 Plus」が発売された。東京・銀座のアップルストアをはじめ、国内では発売前から徹夜組を含む多くの人が行列を作り、今年も「フィーバー」は過熱気味だった。
ただ今回は、大勢の中国人客が店に押し寄せたのが目立った。日本に限らず米国や香港でも同じ現象が起きたが、ある共通の「目的」があったようだ。
英語を解しない中国系の年配女性が行列の先頭
銀座のアップルストアでの騒動は、2014年9月22日に「とくダネ!」(フジテレビ系)が詳しく報じた。販売が始まると、番組取材班は店の近くに停車中の車のトランクに、新品のiPhoneの箱が山積みとなっているのを発見した。慌てて閉める中国人に取材を試みるが、中国語で「時間がない」を繰り返して拒否。だがカメラはその後、再び車に集まってきた人たちが何か「やり取り」している姿を映していた。
どうやら購入したばかりのiPhoneを業者に転売していたようだ。別の車の窓には「6 Plus」を「高値で買い取ります」の張り紙があった。容量が128GBモデルの価格は14万円とある。定価が税込で10万7784円なので、3万円強の利益を得られる計算だ。求められているのは、通信業者を問わない「SIMフリー版」。日本で購入した端末を、そのまま中国で使用できる。
現時点で、中国での新型iPhoneの発売は未定。金銭的に余裕があり、一刻も早くiPhoneを手に入れたい中国人なら、多少金額が高くても買うだろうとの見立てだ。アップルは、転売目的の購入を認めていない。それでも「需要」が旺盛とみたのか、過去のiPhone発売時にはあまり起きなかった「中国人大行列」となったのだろう。
同じような騒ぎは、日本以外でも起きていた。特に目立ったのが、米ニューヨーク。その様子を写した動画が、ユーチューブ上で公開されている。
米映像カメラマンのケーシー・ネイスタット氏は、iPhone発売前日の2014年9月18日から丸1日に渡り、マンハッタン・ソーホー地区にあるアップルストアの行列を撮影した。先頭は中国系の年配女性で、英語で話しかけられてもほとんど解しない。ほかにも大勢の中国人が並ぶ。通訳を介して中国語で質問するが、誰ひとり「転売目的」とは口にしなかった。
夜中になると、路上で寝る人が続出して警官に「歩道からはみ出すな」と注意されたり、飲食後のゴミがあちこちに散乱したりする様子が映し出された。何が原因なのか、あちこちで中国語の口論が発生。さらに女性が暴れて警官に拘束されるシーンもあった。
買ったばかりのiPhoneを「業者」に手渡し
そして開店。1番乗りの「おばあちゃん」も無事、iPhoneを2台購入して外に出てきた。すかさず青い上着を来た男性が近寄る。次のシーンでは、iPhoneが入った袋はなぜか男性が持っていた。何が起きたのだろうか。
ほかにも購入者に言葉をかける男や、iPhone入りの包みが詰め込まれた大きな手さげ袋が映し出される。その「種明かし」ともいえる映像が次に流れた。ある人が、買ったばかりのiPhoneを「業者」に手渡しする、相手は中身を確認し、「金額」を書いたと見られるメモを見せる、最後はiPhoneを買い取るために札を数える――。「転売」の一連の行動を連想させるものだ。こうした「交渉」は、路上のあちこちで映されていた。動画は、「この手の商売は誰にとってもよくないと思う」というネイスタット氏のメッセージで終わる。
日米以外に香港でも、「転売屋」らしき姿が目撃されていた。9月19日付の米ウォールストリートジャーナル電子版は、香港中心部にあるアップルストアの外で、大きなスーツケースを持った数人が金銭を数えていたと報じた。特にゴールドモデルの「6 Plus」に関心を寄せていたそうだ。
海外で次々と新型iPhoneを手に入れた業者が、今度は中国への持ち込みでトラブルを起こしているという。「税関で大量のiPhone6が、密輸の疑いで当局に押収された」といった現地発のニュースも入ってきた。一方で、中国国内では既に高額でiPhoneが売られているとの報道もある。
中国では、高額所得者の証としてiPhoneを持つことがある種のステータスで、金に糸目をつけない富裕層もいるという。だが、こうした動きに眉をひそめる向きもある。中国留学の経験がある男性に聞くと、日本在住の中国人留学生のなかには今回の転売騒動を耳にして「同じ中国人として恥ずかしい」との批判が少なくないようだ。また、取材に応じた中国広東省在住の中国人男性は、「ほかのスマートフォンを使ったこともあるが、iPhoneはより高品質で動作が安定していると感じる。ぜひiPhone6が欲しい」と話す一方で、転売により流れ込んできた「密輸品」を買う気は全くない。