新日本プロレス「ネット重視」でV字回復 FBやツイッター、動画配信を駆使、新顧客呼び込む

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   長年にわたり国内のプロレス界をけん引してきた新日本プロレスの業績が回復してきた。2000年以降、2度にわたって経営母体が変わり、現在はカードゲーム会社のブシロードが親会社だ。

   「プロレス冬の時代」には業績低迷に苦しんだが、近年はファン層拡大のため、「いかに観戦してもらえるか」をあの手この手で工夫し、それが功を奏した。

フェイスブックは4か国語、レスラーの投稿「リツイート」呼びかけ

   ブシロードが新日本プロレスを買収した2012年、年間売上高は11億円まで落ち込んでいた。だが翌年は25億円まで「V字回復」を果たしたと、ブシロード社長で新日のオーナーを務める木谷高明氏が経済誌のインタビューで明かしている。

   新日の公式ウェブサイトを開くと、ツイッターやフェイスブックといった交流サイト(SNS)、ニコニコ動画やユーチューブなど動画配信サービスの活用が目立つ。ツイッターは所属レスラーがアカウントを持ち、情報発信をしている。さらにサイトではランキングを設けて、ファンに向けて「応援している選手の投稿をリツイートして上位に押し上げよう」と呼びかけ、活性化を図っている。フェイスブックは日本語ほか英語、中国語、スペイン語の4か国語対応だ。新規顧客の掘り起こしに役に立っているようだ。

   放送は、以前は地上波テレビの深夜枠のみだった。最近はニコ生でのインターネット配信により、会場に足を運べないファンが観戦できるように配慮。海外でも視聴できるように、ユーストリームで有料提供する。BSやCSでのテレビ放送も拡充し、選手たちの熱いファイトを多くの人に届ける。

   木谷氏はインタビューのなかで、プロレスを音楽業界のトレンドと重ね合わせて「ライブの重要性」を説く。音楽CDの販売が低迷する半面、アーチストのライブの市場が伸びている。プロレスもレスラーの戦いぶりを会場で楽しむ「ライブ型」だけに、成長の可能性を見いだしたそうだ。

   1972年、アントニオ猪木氏(現参院議員)が旗揚げした新日は、猪木氏をはじめ団体所属のレスラーが歴代社長を務めてきた。だが1990年代以降に団体の乱立や総合格闘技ブームの影響でプロレス人気が下降線となり、会社としても「放漫経営がたたり経営は長らく傾いてきた」(東洋経済オンライン2013年1月18日)。

売上高550億円の米WWEを目指す

   2005年11月、新日はゲーム会社ユークスに子会社化され、経営立て直しを図るが思うような成果は上がらなかったようだ。当時、新日所属で現場責任者も務めていた蝶野正洋選手は自身のメルマガ(「アスキー.jp」が2012年2月27日に再掲)の中で、ユークスについて「最初から俺はソリがあわなかったな。プロレスに対する方向性、興行に対する方向性もまったく感じられない、いや無かったんだと思うよ」と厳しい評価を下している。「新日再生」を言うものの、具体的に何をどうするか提案が出てこなかったそうだ。

   その結果、2012年にブシロードが5億円で買収する。2度目の「身売り」はしかし、効果が表れてきているようだ。

   木谷氏は、米プロレス団体WWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)を目標とする。ニューヨーク証券取引所に上場し、米国だけでなく欧州や日本にも事業を広げる業界最大手だ。2013年度の業績は、売上高5億800万ドル(約554億円)、純利益280万ドル(約3億520万円)と黒字決算となっている。売上高のうち約75%は興行とテレビ放映権による収入が占めるが、ネットでの有料放送やグッズ販売による「デジタルメディア」収入が全体の約7.5%と伸びてきている。新日がネット戦略に力を入れるのも、こうした面をお手本にしているかもしれない。

   WWEは世界的にマーケットを広げているが、新日も将来は新市場の開拓を視野に入れているそうだ。フェイスブックが4か国語で運営されているのは、その表れだろう。特に中国語のページがある点は、木谷氏がインタビューで「プロレスの観戦文化がある台湾や東南アジアへの展開を考えている」と答えている点を裏付けていると言えるかもしれない。

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