電機大手のソニーは、2015年3月期の連結最終損益の見通しが、500億円の赤字から2300億円の赤字になったことで、中間配当、期末配当を無配とすることを決定した。ソニーが無配になるのは、1958年に東京証券取引所に上場して以来、初めてになる。
さらには、モバイル・プロダクツ&コミュニケーション事業に従事する7100人の社員のうち15%にあたる約1000人を削減する計画も発表。事業売却、人員削減、経費節減、業績の下方修正の連続に、将来のソニーにはいったい何が残るのだろう――。
モバイル事業を「柱」に据えたのは5月だった
赤字拡大の原因となったのは、モバイル事業。2014年5月の経営説明会のときに、スマートフォンを反転攻勢の柱に位置付けたばかりだ。
2015年3月期の業績予想でソニーは、全体で7兆8000億円の売り上げを見込んでいるが、スマートフォンを含むモバイル事業は、このうち約2割にあたる1兆5300億円、営業利益は260億円を見込んでいた。
ところが、14年4~6月期のモバイル事業は27億円の営業赤字を計上。スマートフォンの販売目標も5000万台から4300万台に引き下げた。赤字脱却をスマートフォンに見いだそうとしたが、安価なモデルで台頭著しいXiaomiなどの中国企業に「食われた」。
そもそも、モバイル事業は14年3月期決算で1兆2576億円を売り上げたが、営業損益は843億円の赤字だった。そんな事業を「柱」に据えることが「正解」だったのかどうかも問われるところだ。
14年7~9月期で、モバイル事業の営業権全額の減損約1800億円を、営業損失として計上することも赤字拡大の要因となった。
とはいえ、ソニーはモバイル事業を、イメージング・プロダクツ&ソリューション事業やゲーム事業とともに「コア3事業」に位置付けている。平井社長は「(モバイル事業が)重要な事業であるという認識は変わらない。スマートフォン市場は20%以上の伸びをみせており、年間13億台の市場規模がある。長期的には、『ポストスマホ』といえる新たなモバイル・コミュニケーション機器が登場した際に、ソニーとしての資産を活用して、打って出たい。その土台をつくるうえでも重要である」と語り、ソニーの「コア事業」であることを強調した。
それにもかかわらず、モバイル事業に従事する7100人の社員のうち、15%にあたる約1000人を削減する計画を打ち出した。
経営コンサルタントの大関暁夫氏は、「モバイルを柱にすると言っておきながら、半年もたたないうちに1000人もの人員削減を打ち出すとは理解に苦しみます。なにをしたいのか、まるでわかりません」と、呆れぎみだ。
好調なのは「金融事業」ではあるが...
苦戦しているのはモバイル事業だけではない。ソニーのエレクトロニクス事業は3年連続で赤字。かつて、「世界のソニー」といわれ、花形だったテレビ事業は10年連続の赤字で、7月に分社したばかり。光明が差したようにみえたモバイル事業もコケては、なかなか展望は開けない。
目下のところ、ソニーの業績を支えているのは、「PlayStation 4」の販売が好調なゲーム事業とエンタテイメント(映画・音楽)事業、それと金融事業だ。
なかでも、金融事業はソニーの中で最も好調な事業といえる。ソニーの金融事業は、ソニーフィナンシャルホールディングス(HD)と、その子会社であるソニー生命保険とソニー損害保険、ソニー銀行によって構成されている。2014年3月期の金融ビジネス収入は、ソニー生命の大幅な増収もあり、前年同期比15.6%増の1兆77億円と伸びている。
しかし、「ソニー」の看板事業に、ゲームやエンタテイメント、金融はなりにくいのかもしれない。
前出の経営コンサルタントの大関暁夫氏は、「経営不振の企業が立て直しのためにとる手段に、不採算部門の売却があります。ただ、いまのソニーにそれはできません。なぜなら、不採算部門がこれまで会社を支えてきた、本業のエレクトロニクス事業だからです。この事業をさらに売却して、好調なエンタテイメントや金融の会社になることなど、ソニーを知る人であれば、『あり得ない』と思うでしょう。そのことがソニーの立て直しを余計にむずかしくしているのだと思います」と話す。
「ソニー再生」について、大関氏は「平井社長がけじめをつけること。そして、組織を見直し、原点回帰する。それしかありません」という。