各地でかなりの事故、訴訟が起きている
実際にどのような事故が起きているのだろうか。2004年兵庫県の中学校では、練習中に10段ピラミッドが崩れ、下敷きになった生徒4人が軽傷を負い、2人が経過入院した。14年にも熊本県の中学で、10段ピラミッドの練習中、8段目まで組み上がった時にバランスが崩れ、最下段の中央にいた生徒が第一腰椎(ようつい)を骨折した。
また、事故が訴訟に至ったケースもある。1990年、福岡県の県立高校で練習中のピラミッドが崩れ、最下段の中央にいた男子生徒がほかの生徒の下敷きになった。男子生徒は首の骨を折り、全身マヒの後遺症を負った。県は両親から損害賠償を訴えられ、福岡高裁から総額約1億1150万円の支払いを命じられた。
そのほか、静岡県の中学では下敷きになった生徒が頚椎骨折し、両親が学校を相手に訴訟を起こした。ピラミッド以外の事故でも、福岡の県立高校の男子生徒が肩車された際に後頭部から落下して首の骨を折り障害を負ったケースなど、各地で学校側の安全対策をめぐる裁判が行われた。
内田氏の議論には、「組体操は百害あって一利なし」「もはや教育ではありません。怪我人が出る前に禁止を」「悲劇的な事故(=死)が起きないと、気づけないのであろうか」と賛同する声が多い。
一方で、生徒にとって思い出や達成感を得る機会になるというメリットを指摘する意見もある。
こうした反論に対して、内田氏は「『何でもかんでも危険というのか』あるいは『組体操は一体感が得られる』といった言葉で、組体操の現実を一蹴しないでほしい。賛否を争うのではなく、具体的にいま何が起きているのか、しっかりと見つめることでようやく、組体操の『組み立て』が始まるのである」という。