新青丸着岸【岩手・大槌町から】(62)

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蓬莱島の脇を通って入港する新青丸=2014年9月13日、大槌港
蓬莱島の脇を通って入港する新青丸=2014年9月13日、大槌港

   震災で激変した三陸の海を調査、研究する「新青丸」(しんせいまる)という名の学術研究船があります。大槌町の大槌港を母港として、独立行政法人海洋研究開発機構が2013年2月に建造しました。昨年10月のお披露目式では、被災した大槌港の岸壁が復旧していなかったために着岸できず、沖合に停泊したままでした。岸壁が復旧して着岸が可能になり、2014年9月14日に改めて、入港・着岸式がありました。


   大槌港魚市場前の岸壁で行われた式典で、碇川豊町長は「復興の星ともいうべきこの船の母港・大槌が、世界の海洋研究の拠点になるよう期待したい」とあいさつし、平朝彦・独立行政法人海洋研究開発機構理事長は「世界最新鋭の性能を持つこの船が、復興のシンボルとして町民に愛される存在になってほしい」と期待を込めました。式典後、モチまきをして祝い、船内の一般公開に長い列ができました。


着岸した岸壁で開かれた入港・着岸式=2014年9月14日、大槌港
着岸した岸壁で開かれた入港・着岸式=2014年9月14日、大槌港

   新青丸は全長66メートル、幅13メートル、1,629トン。航海速力13.2ノットで、建造費は約110億円。一か所にとどまったまま360度回転できる推進器や自動定点保持装置が備わっています。また、音波を使って海底の地形を測定することができ、水深約1万メートルまでの海水を水深ごとに採取できる採水器があります。さらに、海底の様子を撮影したり、地質を調査したりする無人探査機を搭載できます。


船尾に記された母港「大槌」の名=2014年9月14日、大槌港
船尾に記された母港「大槌」の名=2014年9月14日、大槌港
公開された操舵室=2014年9月13日、大槌港
公開された操舵室=2014年9月13日、大槌港

   新青丸は、老朽化に伴って退役した淡青丸の後継船として山口県下関市の造船所で建造されました。科学技術の粋を凝らした最新鋭の船で、震災後の三陸沿岸の海洋環境を研究する文部科学省の東北マリンサイエンス拠点形成事業を推進する役割を担います。東北マリンサイエンス拠点形成事業は、東北大が代表機関、東京大大気海洋研究所と海洋研究開発機構が副代表機関で、その東京大大気海洋研究所が大槌町にあることから、母港は大槌町に決まりました。


入港・着岸を祝って行われたモチまき=2014年9月14日、大槌港
入港・着岸を祝って行われたモチまき=2014年9月14日、大槌港

   入港・着岸式に合わせ、「大槌 三陸の海は今!」と題した入港記念講演会がありました。震災後、一部でウニが大量発生したことや、海底に沈んだガレキが魚類の漁礁になっていることが報告されました。震災による津波で三陸沿岸の生態系がどう変化し、どのような回復過程をたどるのか。新青丸による調査、研究は、沿岸漁業復興の一助になることが期待されています。

(大槌町総合政策課・但木汎)


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