タイトルホルダーにならないと名前が残らない
ただ声を大にして言っておきたいのは、このままでは投手部門、打者部門のタイトルが取れなくなるのではないか、という点だ。プロ野球選手は個人記録が勝負で、それが生涯を通じて語られる。数字はよくてもタイトルホルダーにならないと、名前が残らない。そのような選手はたくさんいる。
よく首位打者や本塁打王争いで、ライバルがいる相手との試合では、四球で勝負を避けたり、試合を欠場することがあった。そのときは非難を浴びるけれども、10年、20年と経てばタイトルホルダーと取れなかった選手では天と地ほどの違いがある。
大谷の場合、ルーキーだった昨年、なぜ新人王に挑戦させなかったのか不思議でならなかった。新人王のチャンスは一生に一度しかない。投手でも打者でもどちらかに絞って狙うべきだったと思う。
今のままでは投手としての勝利、打者としての打率や本塁打などは、物理的に数字が伸びない。類い希なる素材だけに惜しまれる。
「記録に残る選手」と「記憶に残る選手」。
どちらも素晴らしいが、野球人としてはやはり前者だろう。両方を満足させることができればスーパースターである。大谷の本心はどうだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)