東京五輪に向け、労務費がさらに上昇する見込み
金利だけではない。今回、JR東海が工費を上方修正した主要因が労務費の増加。国内では2013年来、ただでさえ人手不足が叫ばれ、とりわけ建設現場での不足感は深刻で、各種建設工事費の増加につながっているのは周知の事実。2020年の東京五輪に向け、労務費がさらに上昇する見込みで、リニアの工費に影響する可能性は十分ある。JR東海内には「東京五輪が終われば景気も悪くなり、労務費は下がる」との楽観論もあるが、懸念材料には違いない。トンネルまたトンネルという、これまで経験したことのない難工事だけに、この点からも工費が膨らむおそれはある。JR東海は沿線自治体の要望に応じてオオタカなど稀少生物の保護なども含めて環境に配慮するとしており、その対応費用が予定を超える可能性もある。
JR東海は民間企業とはいえ、日本の基幹輸送手段を担う会社でもある。リニアの工費を賄いきれず経営が悪化すれば、国費投入も絵空事ではなくなる。コストを下げつつ環境に配慮する、という難題に直面するJR東海を心配する声は少なくない。