ファンは契約に拘束されるわけではない
このような損害賠償の請求自体に法律的に妥当性はあるのか。アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士は、
「アイドルやその親権者との間で、ファンとの個人的なやりとりを禁止する契約を結んでいた場合、この約束を破ってファンと個人的に連絡をとったり交際したりすれば、アイドルや親権者は、契約違反により損害賠償(民法415条)を支払わなければならない可能性があります」
と見る。
その一方、
「ファンはこの契約に拘束されるわけではないので、契約違反による責任を負うことはありません。ファンが損害賠償を支払うのは、不法に所属事務所の権利を侵害して損害を与えた場合(民法709条)ということになりますが、このような請求も厳しいでしょうね」
と説明する。
さらに、運営側がファンの実名を公表したことについては、プライバシー上の問題があると指摘する。
「アイドル自身は、人前に出ることを前提に活動しているので、プライバシーについても一般人よりは緩やかに解釈するという考え方もありますが、今回公表されたのは、一般人であるファンの男性の実名なのでプライバシー権侵害にあたると思います」