JR川越駅(埼玉県)構内で全盲の女子生徒が何者かに蹴られ負傷する事件が起きた。白杖につまずき転倒した腹いせに背後から蹴ったとみられ、許しがたい行為にインターネット上には怒りが噴出している。
だが一方では、加害者側に理解を示したり被害者の「落ち度」に言及したりする人も少なからずいるのが現実のようだ。
事件後「一人で歩くのが怖い」
被害にあったのは埼玉県立特別支援学校「塙保己一学園」(川越市) 高等部に通う全盲の女子生徒。報道によると2014年9月8日朝、登校するためJR川越駅構内で白杖を使いながら点字ブロックの上を歩いていたところ、前方から来た人物が白杖につまずいた。相手の転倒する気配がした直後、背後から右ひざの裏を強く蹴られた。
加害者は転倒した人物とみられ、近くからは「あんた何やってるんだ」と怒鳴る年配の男性の声が聞こえたという。だが蹴った人物は無言でその場を立ち去った。女子生徒はひざを伸ばしたり曲げたりすると痛みを覚えるといい、病院では全治3週間のけがと診察されたという。女子生徒はこれまでにも白杖にひっかかった人から文句を言われることはあったそうだが蹴られたのは初めてで「一人で歩くのが怖い」と話している。心にも傷を負ってしまった。
7月下旬には、さいたま市の全盲の男性が連れていた盲導犬オスカーが何者かに腰付近を刺されてけがをする卑劣な事件が起きたばかりだ。視覚障害者にとっては盲導犬も白杖も目のかわり。立て続けに起きた社会的弱者に対する卑劣な行為は多くの人にショックを与えた。
インターネット上には「逆上すんなよ...仕方ないじゃん」「マジ捕まえてほしい」「加害者だっていつ障害者になるか分からないのに」「点字ブロックでの優先順位は視覚障碍者が上でしょう」といった声が相次ぎ寄せられている。
「尾木ママ」こと教育評論家の尾木直樹さんも10日、「憤り通りこして脱力感と悲しさ...」「なんて世の中になったことでしょうか...悲しいですね」と女子生徒の一件をブログで嘆いた。
「謝ってないなら蹴った人の怒りももっとも」「全盲なら家でんなよ」
ところがその一方で、蹴ることは問題だとしつつも加害者側に共鳴する人も少なくない。特に女子生徒が白杖のぶつかった相手に謝罪をしたという報道がないことから、ツイッター上には
「正直全盲だからとは言え他人に杖で転倒するような事されたら普通に殴りたくもなるとは思うんだよなぁ...」
「自分の持ってる杖で人が転んだかもしれないのに歩き続けたというのは同情の余地ないとおもうんだけど」
「少女って謝ったの?こける気配がしたっていってたけど... まあ蹴った人も正しいとは全然言えないけどね。謝ってないなら蹴った人の怒りももっともな気がする」
といった意見がいくつも投稿されている。
こうした声に対しては視覚障害のある人たちから、
「全盲だと何が起きたか見えないんだから、痛ぇ...とか声がしない限り分からんよ」
「杖でも身体でも人をイメージさせる物に当たったらとりあえず謝るし、ましてや相手が転んだことを認知したら『大丈夫ですか』って思わず声が出て立ち止まると思うんです」
といった反論も出ている。
また、女子生徒が謝ったかどうかの話にとどまらず、
「通勤ラッシュのときとかはさすがに周りからしたら邪魔やからさすがにそこんとこは理解しといてほしいわ」
「え?黄色い線上は視覚障害者の専用線なの?いやそんな意識全くなかったし、ラッシュ時にあそこ歩かないなんて無理だよ」
「全盲の人が迷惑かけてしまうのはしょうがないけれど、全盲なのを理由にしてはいけない」
といった意見も出ている。中には「めくらはめくららしく家の座敷牢ででも大人しくしてればいいのに」「全盲なら家でんなよ...」などと心無い差別的な発言も散見される。
事件後には加害者寄りの発言などを集めたNaverまとめも作られた。12日18時時点でツイート回数は1万2600回以上、Facbeookの「いいね!」は約1万3000回つくなど反響を呼び、「嘆かわしい想像力の欠如」「世も末」とバッシングを受けている。