円安なのになぜ輸出増えない 貿易赤字、最長記録を更新中

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中国向けに、製造に使う機械や部品を輸出する役回り

   円安が理屈通り輸出増に結び付かないのは、いくつかの要因が絡んでいる。第一に、自動車をはじめとする企業の海外生産シフトだ。内閣府の2013年度企業行動アンケートによると、日本メーカーの海外生産比率は20.6%(2012年度実績)と過去最高になっており、2018年度には25.5%に増える見通しという。

   こうした海外シフトは、個々の企業として「世界に打って出る」という意味で前向きなら、海外でのもうけが配当などの形で国内に還流する部分もあるので悪くないが、深刻なのは国内で作らないだけでなく海外へのシフトもしていない、国際競争に敗れた分野だ。

   電機産業が典型で、例えば携帯電話など通信機の貿易赤字は2兆円を超えていて、経済産業省の統計によると日本の情報通信機械は半分弱が輸入品になっている。まさに、競争力の劣化で輸入が膨らんでいるわけで、一度こういう状況に陥れば、巻き返すのはほぼ不可能だ。

   これを裏返してみると、日本は「世界の工場」として様々な最終製品を作る中国向けに、製造に使う機械や部品を輸出する役回りになっているということになる。実際、このところ中国向けに金属加工機械や液晶関係部品の輸出が増えている。

   もちろん、日本からは新興国で生産できない付加価値の高い製品の輸出はなくならないが、こうした製品は「為替よりも輸出先の景気の影響を受けやすい」(シンクタンク)。これも、円安でなかなか輸出が増えない一因となっている。

   赤字の大きな要因とされるLNGなど燃料輸入も、大和総研の試算では、原発停止に伴う鉱物性燃料の増加量は10%、これによる輸入額の増は年間4兆円で、貿易赤字全体(2013年11.5兆円)の半分にも満たない。

   米国の景気回復期待を背景にした早期利上げ→日米金利差の拡大の連想で、ここにきて円安・ドル高が一段と進み、ついに1ドル=106円台に突入した。期待の輸出が伸びにくい構造の中、輸入価格上昇、輸入額の膨張という円安のマイナス面が、一段と強く意識される局面に入りつつあるのかもしれない。

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