「いい時こそ先に手を打つ時だ。やることはたくさんある」
創業1887年。社長就任から27年。筆記具大手の三菱鉛筆の数原英一郎社長は、2014年9月9日、ラジオ日経「夢企業探訪」のインタビューでこう強調した。
2013年度に続き、2014年度も相次ぐヒット商品や円安などを背景に増収増益をうかがう勢いにもかかわらず先を読む経営を説く。
情報公開はトップが率先しなければならない
数原社長のビジネスマンとしての原点は、1974年の入社当時の狂乱物価時代に在庫の山を抱え、売り上げが20%も減少した当時の苦い思い出にある。
「末端では何が起きているのかよく分からなかったし、やたらに幹部社員が右往左往していた記憶だけが焼き付いている」
この教訓から毎月1回社員向けのホームページには社内に何が起きているかを社長が社員に伝える手紙を書いている。「情報公開はトップが率先しなければならない」という。
創業者の真崎仁六氏から数えて5代目の社長。初代社長は鉛筆の国産化に初めて成功するなどベンチャー精神あふれる経営者だった。2代目は黒色鉛筆に色彩鉛筆を加えるなど鉛筆の総合化に成功した。
目指すのは世界一の筆記メーカー
3代目社長は日本一の鉛筆メーカーに三菱鉛筆を育て、4代目社長は総合筆記具メーカーに成長させた。「5代目が目指すのは世界一の筆記メーカー。売り上げ、商品開発、品質、信用、すべてにチャレンジしたい」と夢を語る。
「新しい筆記具の多くは日本で生まれている。開発競争を支える応援団にも感謝している」
1958年以来ロングセラーを続ける鉛筆「ユニ」を柱に水性ボールペン、サインペン、油性ボールペンなどに枝ぶりを広げてきた実積をさらに積み上げる考えだ。