怪談でおなじみのタレント・稲川淳二さん。実は、グッドデザイン賞を受賞したこともある工業デザイナーの肩書を持っていたことが話題になっている。
出演した対談番組で、デザイナーとして活躍していた過去を話し、視聴者からは「全然知らなかった」と驚く声が相次いだ。
バーコードリーダーや新幹線の検札機も手がけていた
対談が行われたのはNHK・Eテレで2014年9月6日に放送された「SWITCHインタビュー達人達」だ。「おろち」「漂流教室」などの代表作があるホラー漫画家の楳図かずおさんとの対談が行われると知って、多くのファンが怖いもの見たさで番組を楽しみにしていた。
お互いの怪談やホラー漫画への思いを語り合ううち、稲川さんは「実は私が昔、設計したんです」とスタジオに飾られていた車止めを紹介。石材で作られた灯籠のようなデザインで、
「グッドデザイン賞をもらったやつなんです。中にライトが入っていてね、ふわーっと明かりが広がって、その中を人が歩ける」
と自身の作品を説明した。
多くの人にとって初耳だったようで、視聴者からは「工業デザイナーだと知って驚愕してる」「稲川淳二ってデザイナーだったのか…!!」と驚きの声が相次いだ。実際にこの「車止め[JI-01]」は1996年度の商品デザイン部門でグッドデザイン賞を受賞。同シリーズは9種類のデザインバリエーションがラインアップしている。
さらに稲川さんが駅売店で使われたバーコードリーダーや新幹線の検札機などのデザイン、飲食店の店舗設計を手がけたことも明らかにすると、楳図さんも「うわぁー、素晴らしい!そんなことをやっていらしたんですね」とビックリした様子だった。
楳図さんの自宅訪問リポートでは、白い階段のカラーリングについて「アイレストホワイトってやつです。非常に落ち着いて穏やかになりますね」と解説して見せ、工業デザイナーとしての片りんを示した。
もともと絵が得意な少年だったそうだが、あまりにおしゃべりだったため先生から「絵描きは無口なもんだ、デザイン方面がいいんじゃないか」と勧められ、工業デザイナーの道を選んだという。その後、デザイナー業と並行してタレント活動をスタート。怪談を話し始めたきっかけは、深夜ラジオでたまたま披露したところ大好評になったからだそうだ。
桑沢デザイン研究所インダストリアル科卒
工業デザイナーとしての経歴は隠していた訳ではない。公式ホームページのプロフィールを見ると、多くのデザイナーを輩出した専門学校、桑沢デザイン研究所のインダストリアル科を卒業したことや、デザイナーとして会社勤めをしていたことが明記されている。
また、「デザイナーとしての経歴」という項目が設けられており、浜松でヤマハやスズキなどの特殊ボディーデザイン、焼肉レストランやバーの店舗デザインを手がけたことが紹介されている。
一見すると怪談と工業デザインはまったく違うジャンルのように思われるが、秋田魁新報のインタビュー(12年9月3日付)に稲川さんはこう答えている。
「デザイナーの感性が怪談に生きることも大きいですよ。デザインは、どこかでバランスを取ったり強調したりする。人間が使うものや生活する空間なので、とんでもないものはつくれないけど、どこかで異質なものを探している。実は怪談も同じ。聞く状況をデザインして話の空間をつくっていくんですよ」