世界に熱烈なファンをもつニッチなメーカーに
スバルが新型WRXの開発で、ポルシェ911など欧州のピュアスポーツカーをベンチマークとするには理由がある。BRZはポルシェケイマン、レヴォークはアウディS4がベンチマークだった。それは「クルマを移動手段としての利便性や経済性でとらえ、コモディティー(日用品)化する傾向が強まっている。言わば、味のないクルマが多くなっている」(富士重工の日月丈志取締役専務執行役員)からだ。
スバルの開発エンジニア出身の日月氏は「クルマがコモディティー化する一方で、密度の高い満足感、言い換えればしっかりした味を求めるお客様が確実にいる。WRXにはしっかりした味、スバルらしい味がある」と、記者会見で自信を見せた。
富士重工は2020年目標の新中期経営ビジョンで「大きくはないが、強い特徴をもち、質の高い企業」を目指すと宣言し、スバルの「安心と愉しさ」を磨くことで、世界にスバルファンを増やすことを狙っている。
世界の自動車市場に占めるスバルのシェアはわずか1%に過ぎない。しかし、スバルは日本だけでなく、北米を中心に世界に熱烈なファンをもつニッチなメーカーの地位を得た。若者のクルマ離れが進み、クルマが白物家電のようにコモディティー化すればするほど、WRXのような「味のあるクルマ」が注目されるのかもしれない。