欧州航空機メーカー、エアバスとの間で大型旅客機A380の解約トラブルに直面するスカイマークの行方が混沌としている。業績不振の同社に対しては、全日空を始め国内外の航空会社などが経営支援に関心を持っているとされる。狙いはいずれも同社が保有する羽田空港の36の発着枠だ。
ところが国土交通省が、スカイマークが経営破綻したり、他社の資本系列に組み込まれたりした場合、保有する発着枠は新会社に自動的には引き継がれないとの見解を示したことで、スポンサー企業にとって支援の理由が見当たらなくなってしまったのだ。
日経はエアアジアが支援と報じた
「羽田の発着枠は国民の共有財産。スカイマークには新規優遇枠として羽田枠を配った経緯がある。経営破綻すればいったん全部国で没収することになる。資本関係が大幅に変わった場合も別法人と見なすため、発着枠はいったん国に戻し、再配分を検討することになる」
国交省の幹部はこう述べて一部の新聞報道を否定した。一部の報道とは、8月中旬、日本経済新聞がマレーシアの格安航空会社(LCC)、エアアジアがスカイマークへの出資を検討していると報じた1面トップ記事だ。エアアジアの例が仮に実現すれば、上記の資本関係の変更に該当するが、同省の見解ではスカイマークの発行済み株式の20%以上を保有する大株主になれば、羽田発着枠は引き継がれないことになるのだ。
スカイマークは今春から、エアバスとの間でA380を6機購入する契約(総額1915億円)のうち、4機の購入をキャンセル、残る2機の納入も延期するよう求めて交渉を進めてきた。だが、スカイマークの支払い能力に疑義を持つエアバスは大手航空会社の傘下に入ることを条件に突きつけ、できない場合は6機全部をキャンセルし、約700億円の違約金を請求することを通告しているという。
10月以降は運賃を大幅に引き上げる予定
エアバスはスカイマークから払い込み済みの前払い金260億円の返還にも応じない姿勢で、前払い金を資産に計上しているスカイマークは今年度中に損失処理を迫られる。
同社は引き続きエアバスと違約金の減額交渉を続け、9月中に決着させる方針だが、エアバスの態度は頑なで、協議が不調に終われば訴訟に発展することが考えられる。スカイマークは10月末から成田空港発着の札幌(新千歳)、米子、那覇の各路線を運休し成田からは完全撤退するなど不採算路線の廃止し、当面の出血を抑えることを決めた。これまでは大手とLCCの運賃の中間の価格帯で客を呼び込む「ミドルコストキャリア」として一定の存在感を維持してきたが、10月以降は運賃を大幅に引き上げる予定で、客離れにつながらないか危ぶむ声もある。
同社の先行きが危ぶまれている理由には、これまで経営資金を資本市場から調達し、頼れるメインバンクが存在しないこともある。創業からの大株主である旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は今回の問題発覚前に株式の一部を売却していたことが判明しており、支援の意向は薄いとみられている。
スカイマークは今も公式には独立経営を維持していくと説明しているが、今後は水面下で20%未満の出資比率で資金支援に応じてくれるスポンサー企業を探すことになりそう。日本の大手のほか、米航空大手などの外資系、海外のLCC、国内インターネット系旅行代理店などの名前が取りざたされているが、「エアバスとの違約金交渉が決着しない限り恐くて手が出せないだろう」(大手金融機関幹部)という見方が支配的だ。