「慰安婦を殺して、その肉を食べた」――。中国に駐屯していた元日本兵による証言を中国の国営通信・新華社通信(電子版)が2014年9月4日に伝えた。
ほかの新聞社はホームページで新華社の記事を配信し、人民日報(ウェブ版)はインタビューの動画を公開。驚きの証言はウェイボーなどでも拡散されている。ただ、本人が直接目撃した情報ではないようで、単なる「うわさ」程度の可能性もあり、信憑性がどれくらいあるのか全く不明だ。
虐殺行為や強姦も証言
証言したのは山東省に駐在していたという旧日本兵の絵鳩毅さんだ。記事によると、遼寧省にある社会科学規画事務室の研究員が2013年7月に日本で8人の戦犯から聞き取り調査を行い、研究成果として発表。絵鳩さんの証言はそのうちの1つだ。
絵鳩さんは今年101歳を迎える高齢だが、言いよどむことなく、はっきりとした口調でインタビューに応じている。動画の冒頭、「私は大きな戦争犯罪を犯しました。敗戦の年の6月のこと、大隊長の命令で教育中の初年兵30名に、中国人捕虜4名を交互に刺殺、刺突(つきさすこと)させるという犯罪でした」と自白する。
さらに、
「捕虜の中の1名の女性が、ある下士官の慰安婦にされていた。それが索格庄(編注:山東省の地名)の駐在が長くなって、食べ物に若干苦しむようになった時、彼はその女性を殺害し、その肉を食べた」
と証言した。
「自分で食べたばかりではなく、中隊に今日は大隊本部から肉が上がったからとごまかして、中隊の全兵隊に食べさせたといううわさを聞きました。うわさでありますが、後に撫順管理所(編注:遼寧省にあった戦犯収容所)において、その本人が自白していると聞いております」
と続ける。うわさに当たる部分は下士官が殺害して食べたことなのか、中隊に食べさせたことなのかは分からない。新華社は「日本軍が慰安婦を殺して肉を食べた」という見出しをつけている。
そのほか、日本軍による虐殺行為や女性への強姦が日常的に行われていたこと、慰安所を設けて中国や韓国の女性を囲って金銭を払って関係を持つことが習慣的だったと話した。
「思想改造をしていただいた」とも語る
絵鳩さんは「中国帰還者連絡会(中帰連)」の常任委員長を務めていたと語る。中帰連は撫順戦犯管理所に収容された戦犯たちが結成した組織だ。日本軍の虐殺行為をまとめた書籍を出版したり、各地で講演を行ったりしている。2002年に解散し、現在は「撫順の奇跡を受け継ぐ会」として活動を続けている。
今回の証言で気になるのは、「撫順戦犯管理所で思想改造をしていただいた」と自らを話すことだ。インタビュー動画を見ると、前半部分で日本軍が行った強姦や残虐な行為をひたすら語る一方、後半では日本の戦犯への中国の寛大な処分への感謝を述べている。「自分の親兄弟を殺害した人間を、『人間扱いせよ』というのはできないと思います。しかし中国政府と人民はしてくれた」「日本戦犯を優遇して(日本に)返すというのは一つの奇跡。中国政府と人民は奇跡をやった」と「中国礼賛」を繰り返し語っている。
13年7月に行われたインタビューがなぜ今になって新華社の記事になったのかも不可解だ。14年9月3日は「抗日戦争勝利記念日」が初めて国家の記念日として制定されたため、前後してメディアは日本軍の残虐行為を喧伝する記事を量産していた。今回の記事も、こうしたキャンペーンの1つとみられる。